2012年11月8日木曜日

マクベス(下書き)001

ハムレット Hamlet 飜譯本文:
                                      

このページは,
blog 形式ではありますが,
ほゞ,日〻更新豫定です.
御承知置きのほどを…

THE TRAGEDIE OF
MACBETH

マクベスの悲劇(下書き)


なほ,譯文中の『句點』については,臺詞として,
登場人物の意識の『流れ』を優先するために,
文法上の句の切れ目や語の繫がりとは,異なる場所に施したものが,
(すくな)からず,ある.
和歌,俳句,短歌の詠みをに繋がるものと承知置き願ふ.

なほ,譯者の理想は,芭蕉の次の言に盡きようか.
『謂ひ應せて 何かある』(去來抄)

Scene 1(1-1)
雷鳴と稲光.其處へ三人の魔女.
1     1. いつ,次ぎ三人で,また逢ふね.
      雷,稻妻,それとも雨降りに.
       2. 今のあの,擦(す)つた揉(も)んだで,
      戰(いくさ)が負けだの勝つだのしたらさ.
       . なら,日の入り前だ.
     . 何處で.
5      2. あの野つ原で.
       . そこで,ばつたり,マクベスに.     [ 猫の鳴き聲す]
       . 今行く,ねずドラや. [ 蟇蛙の鳴き聲す]
      皆〻.   (ひき)が呼んで.あいよ.
      見目好し,穢(けが)れ.穢れ,見目好し.
      ゆらゆら,霧と,よどんだ風に乘り.       退場.


Scene 2(1-2)
喇叭,奧にて.そこへ國王,マルコム,ドヌルベイン,
レノックス,侍者を引連れ,出る.

と,血塗れの將校と出會ふ.
1    國王. はて,血塗(まみ)れの,あの者は.きつと知らう,
      傷口も生〻しい.謀叛人(むほんにん)どもの,
      今の樣子を.
     マルコ. あの將校です.まこと見事な働きで,
      こちらは虜(とりこ)を免(まぬか)れた.おゝ,勇ましき友.
      さあ,國王に,戰(いくさ)の行方(ゆくへ)を,
      いま目にして來た.
      將校. どちらがとも,まだ.
      まるで泳ぎに,疲れ果てた敵(かたき)同士が,
      なほも互ひを,組み敷(し)かむといふ.
      あの,殘忍を窮(きは)む,マクドンウォルド,
      (まさにも逆賊.募(つの)る逆意は蜂どもの,
      群がる如く)
      西の島〻より,步兵と騎馬の軍勢を得て,
      恰(あたか)も運命の女神めは,
      忌(い)むべき裏切りに笑(ゑ)みを送る,
      謀叛の輩(やから)の色女かと.が,いづれ徒花(あだばな)
      勇猛の士たる,マクベス殿,
      その名に恥ぢず,女神を尻目に,これ見よと,
      手にする劔(つるぎ)を血糊に曇らせ,
      まさに武勇の,神の申し兒,
      道切り開きて,彼奴(あやつ)に眞(ま)向ひ,
      出遇(であ)ひの握手も,別れの言葉もあらばこそ,
      相手を臍(へそ)から,顎(あご)の下まで切割(きりさ)いて,
      更には首を,我が方の,城壁の上に.
     國王. おゝ,一族の誇り.まこと,武人(ものゝふ)
5      將校. と,太陽が,步みを轉(てん)ずる季節には,
      船覆(くつがへ)す時化(しけ),地には雷(いかづち)
      まさに春の泉より,安らぎの湧くと見ゆるや,
      禍事(まがごと)も頭を擡(もた)ぐ.
      お聽きを,スコットランド王,是非に.
      今や正義は,武勇をもつて,敵の步兵を打破り,
      奴らはひたすら逃げる去るところ,
      ひとり,ノールウェイよりの武將,
      機を窺(うかゞ)ひて,武器を硏(と)ぎ立て,
      新手(あらて)の兵を得,新たなる攻めを.
     國王. たぢろぎは,これに,
      我が方の將,マクベスとバンコーは.
     將校. 如何にも,雀どもに大鷲が,
      または,野兎に獅子が,との程なら.(原文は,主語と目的語が逆.)
      まつたくに,この二方(ふたかた)こそ,彈藥を,
      二重(ふたへ)に籠(こ)めた大砲さながら, 
      二重二方,四層倍の,反擊を敵に.
      その姿たる,湯浴(ゆあ)みを敵の血飛沫(しぶき)で,
      または,ふたゝびゴルゴタの,
      髑髏(どくろ)の丘を,築かう爲であるとしか.
      が,氣も幽(かす)かに.傷口どもが,助けを叫んで.
     國王. (よ)くぞの報せ,その傷と言ひ,
      いづれも譽(ほま)れと見た.それ,直ぐ,醫者たちに.
そこへ,ロスとアンガス.
      誰か,あれは.
  マルコ. 御方(みかた),領主のロス.
10    レノ. 何と,急(せ)くやうな,あの目色.
      面(おも)差しからは,變事の報せかと.
   ロス. 王に榮(は)えあれ.
     國王. 何處より,參られた.
     ロス. ファイフの地より.あのまさに,
      ノールウェイの旗ども空に驕(おご)りはためき,
      渡る風,民を寒からしむ.
      そのノールウェイ王,大軍を率(ひき)ゐ,
      後ろ詰めには,不忠極まる謀叛人,コードーの領主,
      我が方へ向け,もの凄まじき攻めを.
      されど,戰(いくさ)の女神ベローナの,花婿マクベス,
      鎧(よろひ)を纏(まと)ひ,持てる力を存分に,
      一足も引かず,受ければ返し,斬り結び,
      王の驕(おご)れる心を挫(くじ)き,
      終(つひ)には勝利を,我が方へ.
     國王. 嬉しき限りか. 
15  ロス. かくて,ノールウェイ王スウェーノウは,
      和議をと請(こ)うて.いえ,許すなど,
      斃(たふ)れた兵どもの埋葬すらも.
      事を償(つぐな)ひ,セント・コームの島に於いて,
      一萬ダラーを,納め寄越します迄は.
    國王. もはや,コードーの領主めには,
      人の心を裏切れぬやう,直ちに死罪を申し渡せ.
      そして,彼奴(あやつ)が,嘗(かつ)ての稱號は,
      マクベスへと.
    ロス. 仰せ,慥(たし)かに.
    國王. 奴の失ふ,總てが榮(は)えある,マクベスの手に. 
                               退場. 
Scene 3(1-3)
雷.そこへ,三人の魔女
1     1. 何處にお出(い)でた,お前さん.
     2. 豚を取ッ殺しに.(狂牛病同樣の「狂『豚』病」の意.)
       3. (ねえ)さんは.
     . 船乘りの女房めが,栗の實(み)を前埀れに,
      もぐり,もぐもぐ,もんぐりと.
      お呉れ,てえと,失せろ,魔女めと,
      惡食(あくじき)(ぶと)りめ,大聲(おほごゑ)で.
      あれの亭主は,トルコのアレッポに.
      タイガー號の船長よ.
      なに,篩(ふるひ)の舟なら,一走り.
      尻尾無しの,鼠と決め込み,
      ぎりゝ,ぎりぎり,苛(いぢ)め拔いてやる.
5    2. 篩に,ひとつ,追ひ風を.
     . 優しいねえ.
       3. あたしも,ひとつ.
     . この手の中(うち)には,他のは總(すべ)て.
      港へ向ひ,吹く風は,
      東西南北,ことごとく,
      羅針盤にあらう限りは,みな.
      反吐(へど)で軀(からだ)を干涸(ひから)びさせて,
      眠りなんぞは,夜でも晝(ひる)でも,
      目蓋(まぶた)を降す遑(いとま)無し.
      もう,これからは,呪はれ男.
      つらい七夜(なゝや)が,九(く)の九層倍,
      瘦せて細つて,擦(す)り切れろ.
      船を沈めは出來ぬとも,
      きつと嵐の,海の木の葉に.
      御覽な,これを.
     2. どれさ,どれ.
10        . それ,とある舵取り男の親指さ,
      船は沈没,國への戾り掛けに.
                    ドラムの音
       3. あの音,ドラムの.マクベスめが,來る.
      皆〻.   定めを操る,三人(みたり)のはらから,
      手を携へて,早驅(はやが)けに,
      海でも陸(をか)でも,一走り.
      それ,今,ぐるり,ぐるぐると.
      三たびはそちら,三たび,こちらも,
      次の三たびで,締めて,九つ.
      そうれ,禱(いの)りは仕上つた.
         そこへマクベスとバンコー.
  マクベス. かうも荒(すさ)むは,晴れるはの日など,
      初めてのこと.
  バンコー. 後どれ程と,ソリスへは.何だ,あれは,
      ひねこび,獸(けもの)めいた形(なり)
      まさか,この世のものだとは,が,まさに.( not と on't の韻 )
      生きてか,いゝや,人の言葉は通じてか.
      解るのだな.三人(みたり)(そろ)つて,
      皹(ひゞ)割れ指を,薄つぺたな唇へと.
      御前らが女とは,が,その顎鬚(あごひげ)からすると,
      さうだとは.
15      マク. 口を,まづ利け.何やつだ.
     . よくこそ,マクベス,榮(は)えある御領主,グラーミスの.
     2. よくこそ,マクベス,榮えある御領主,コードーの.
     3. よくこそ,マクベス,必ずや王に,ほどもなく.
    バン. はて,なぜさう驚く,まるで怯(おび)えたかに,
      どれも大いに目出度からうに.まつたくに,
      お前らは,眼のまやかしか,または,まさに,
      見えたがまゝか.我が儕(ともがら)は,お前らに,
      今の位と,なほ譽れある身とも,さらには,
      王にもとまで吿げられて,言葉も無き樣に.
      この身には,何も.
      先行き芽吹く,時の種を知らうなら,
      さあ,どの粒が伸び,または,伸びぬか,
      話してみよ.構はぬ,媚(こ)びも怖れもせぬ,
      お前たちに,好まれようと,憎まれうと.
     . ようこそ.
     2. ようこそ.
     3. ようこそ.
     . 劣る,マクベスに,が,更にも勝(まさ)る.
     2. さほどの幸(さち)無し,が,更なる幸あり.
     3. 末ずゑは王家,己(おのれ)は虛(むな)しくも.
      では,よくこそ,マクベス,また,バンコー.
     . バンコー,マクベス,よくこそに.
    マク. 待て.また,筋の通らぬことを言ふ.譯を言へ.
      父サイネルが戰(いくさ)に斃(たふ)れ,
      なるほど今は,グラーミスの領主.
      が,コードーのとは.
      コードーの,領主は存命,勢ひも盛ん.
      まして,王にとは,まるで思ひも寄らぬこと.
      事コードーの,どころでは.
      いづこにて,その,妙な話を聞き附けた.
      また,何故,こんな荒れ野に待ち受けて,
      預言めいた言葉で,出迎へを.
      言へ,是非は無し.
                     魔女ら,消える.
    バン.土にも泡(あぶく)がゝ,水面(みなも)よろしく,
      まさにも,あれは.どこへと消えた.
    マク. 大氣の中へ.現(うつゝ)のものと見えたが,溶けた,
      吐息(といき)が風に消ゆるかに.
      せめて,今すこし.     
    バン.これは夢では,その,今の,あれこれは.
      食べでもしたか,虛(うつ)け草の根を,
      理性を虜(とりこ)にすると言ふ.
    マク. お子たちは,末ずゑ王にと.
    バン. そちらは,王にと.
    マク. 領主,コードーのとも,違つては.
    バン. いかにも,さうしたもの言ひを.誰だな.
          そこへ,ロスとアンガス.
    ロス. 王には,お悦びなるぞ,マクベス,
      この度の手柄の報せ.御讀みになるや,
      そなた自(みづか)ら擊つて出た,謀叛の地での働きに,
      お驚きと御褒め讚(たゝ)へとが,ともに込上げ,
      あたかも我が事の如く,思ひに耽(ふけ)られ,
      さらに讀み進まれるや,その同じき日に,
      またも,倔強(くつきやう),ノールウェイ兵どもとの鬪(たゝか)ひ.
      なに怖れ氣(げ)も,築く屍(しかばね)の山へも見せで.
      かくて,霰(あられ)の降るやに,相繼(つ)ぐ報せの,
      その何(いづ)れもが齎(もたら)すは,そなたの勳(いさをし)
      この大いなる,王土を護る戰(いくさ)にての.
      まこと,王の御前に,積もるが如くに.
    アン. ついては,そなたを王國の,主自ら勞(ねぎら)ふべく,
      直ちにも,目通りの地へと出迎へよとの事,
      褒賞は追つて.
    ロス. なほ,大いなる譽れの徵(しるし)に,
      王にはそなたを,コードーの領主と呼ぶべしと.
      では,あらためて,まこと榮えある領主殿,
      今や,そなたがこそ.
    バン. 何とまた,惡魔が眞(まこと)をとは.
    マク. コードーの,領主は存命.
      何故また,さうした,借着を着せ掛ける.
    アン. 領主たりし者なら生きても.
      が,今や重き,咎めの下(もと)にある命,
      己(おの)が所業で,失はうまで.
      はたして,ノールウェイ方に通じたか,
      謀叛の族(やから)に密(ひそ)かに與(くみ)し,利を得たか,
      または何(いづ)れもで,國の覆(くつがへ)しを謀(はか)つたか,
      そこは知らぬ,が,大逆の罪,自白も證據もあり,
      すでに位は引剥がされて.
    マク. [傍白]グラーミス,そして,コードー.
      その更にもが,まだ.[ロス.とアン.に]お役目に禮を.
      [バン.に]思はぬか,お子たちを,王にとは,
      あの,コードーの領主を齎(もたら)して呉れた者らが,
      まさにも言つたでは.
    バン. (ま)になぞ受ければ,更には王の冠をとまで,
      コードーの領主どころか.が,妙な事,
      いや,よくあるが.人を陷(おとしい)れようと,
      闇の世界の手先どもが,眞實(しんじつ)を口にして,
      目先の誠意で關心を買ふ,大事の場面で,
      裏切らうがため.[ロス.とアン.に]さう,一言,お二人へ.
    マク. 二つもが眞實に.目出度き口開け,大芝居へ向け,
      狙ふは玉座の.[ロス.とアン.に]まづは禮を,二方に.
      この目眩(くるめ)き誘(いざな)ひの,先は不吉とも良きものだとも.
      不吉なら,何ゆゑ手附けに,かくもの眞實を.
      今や領主,コードーの.良きものなら,何を今更,
      誘(さそ)ひにたぢろぎ,悍(おぞ)ましからう有樣に,
      髪は逆立ち,胸に收まる心臟の,鼓動は肋骨(あばら)の骨を打つ,
      事は未(ま)だだに.この世の恐怖も,目に浮び來る,
      この恐ろしさの比では無い.想ひ描いた殺人は,
      今まだたゞの幻だのに,この身を搖さぶり,
      想ひが全てを包み込む.が,何一つ,今目の前には,
      ありもせぬに.
    バン. それ,我が同輩の驚く樣は.
    マク. 運が王にするとなら,なぜ今,冠(かむり)を差出さぬ,
      何もせずとも.
    バン. 新たな譽れは,初めての衣,すぐは馴染まぬ,
     馴れよう迄は.
    マク. 構はうものか,
     時と時計は止まりなど,大嵐にさへ.
    バン. はて,マクベス殿,


Macb. Come what come may,
Time, and the Houre, runs through the roughest Day.
Banq. Worthy Macbeth, wee stay vpon your ley-
sure.
Macb. Two Truths are told,
As happy Prologues to the swelling Act
Of the Imperiall Theame. I thanke you Gentlemen:
This supernaturall solliciting
Cannot be ill; cannot be good.
If ill? why hath it giuen me earnest of successe,
Commencing in a Truth? I am Thane of Cawdor.
If good? why doe I yeeld to that suggestion,
Whose horrid Image doth vnfixe my Heire,
And make my seated Heart knock at my Ribbes,
Against the vse of Nature? Present Feares
Are lesse then horrible Imaginings:
My Thought, whose Murther yet is but fantasticall,
Shakes so my single state of Man,
That Function is smother'd in surmise,
And nothing is, but what is not.
Banq. Looke how our Partner's rapt.
Macb. If Chance will haue me King,
Why Chance may Crowne me,
Without my stirre.
Banq. New Honors come vpon him
Like our strange Garments, cleaue not to their mould,
But with the aid of vse.
Macb. Come what come may,
Time, and the Houre, runs through the roughest Day.
Banq. Worthy Macbeth, wee stay vpon your ley-
sure.
Macb. Giue me your fauour:
My dull Braine was wrought with things forgotten.
Kinde Gentlemen, your paines are registred,
Where euery day I turne t

Banq. What, can the Deuill speake true?
Macb. The Thane of Cawdor liues:
Why doe you dresse me in borrowed Robes?
But Treasons Capitall, confess'd, and prou'd,
Haue ouerthrowne him.
Macb. Glamys, and Thane of Cawdor:
The greatest is behinde. Thankes for your paines.
Doe you not hope your Children shall be Kings,
When those that gaue the Thane of Cawdor to me,
Promis'd no lesse to them.
Banq. That trusted home,
Might yet enkindle you vnto the Crowne,
Besides the Thane of Cawdor. But 'tis strange:
And oftentimes, to winne vs to our harme,
The Instruments of Darknesse tell vs Truths,
Winne vs with honest Trifles, to betray's
In deepest consequence.
Cousins, a word, I pray you.
Macb. Two Truths are told,
As happy Prologues to the swelling Act
Of the Imperiall Theame. I thanke you Gentlemen:
This supernaturall solliciting
Cannot be ill; cannot be good.
If ill? why hath it giuen me earnest of successe,
Commencing in a Truth? I am Thane of Cawdor.
If good? why doe I yeeld to that suggestion,
Whose horrid Image doth vnfixe my Heire,
And make my seated Heart knock at my Ribbes,
Against the vse of Nature? Present Feares
Are lesse then horrible Imaginings:
My Thought, whose Murther yet is but fantasticall,
Shakes so my single state of Man,
That Function is smother'd in surmise,
And nothing is, but what is not.
Banq. Looke how our Partner's rapt.
Macb. If Chance will haue me King,
Why Chance may Crowne me,
Without my stirre.
Banq. New Honors come vpon him
Like our strange Garments, cleaue not to their mould,
But with the aid of vse.
Macb. Come what come may,
Time, and the Houre, runs through the roughest Day.
Banq. Worthy Macbeth, wee stay vpon your ley-
sure.
Macb. Giue me your fauour:
My dull Braine was wrought with things forgotten.
Kinde Gentlemen, your paines are registred,
Where euery day I turne the Leafe,
To reade them.
Let vs toward the King: thinke vpon
What hath chanc'd: and at more time,
The Interim hauing weigh'd it, let vs speake
Our free Hearts each to other.
Banq. Very gladly.
Macb. Till then enough:
Come friends.            Exeunt.


Ang. Wee are sent,
To giue thee from our Royall Master thanks,
Onely to harrold thee into his sight,
Not pay thee.
Rosse. And for an earnest of a greater Honor,
He bad me, from him, call thee Thane of Cawdor:
In which addition, haile most worthy Thane,
For it is thine.


           
Rosse. The King hath happily receiu'd, Macbeth,
The newes of thy successe: and when he reades
195Thy personall Venture in the Rebels sight,
His Wonders and his Prayses doe contend,
Which should be thine, or his: silenc'd with that,
In viewing o're the rest o'th' selfe-same day,
He findes thee in the stout Norweyan Rankes,
200Nothing afeard of what thy selfe didst make
Strange Images of death, as thick as Tale
Can post with post, and euery one did beare
Thy prayses in his Kingdomes great defence,
And powr'd them downe before him.
205Ang. Wee are sent,
To giue thee from our Royall Master thanks,
Onely to harrold thee into his sight,
Not pay thee.
Rosse. And for an earnest of a greater Honor,
210He bad me, from him, call thee Thane of Cawdor:
In which addition, haile most worthy Thane,
For it is thine.
Banq. What, can the Deuill speake true?
Macb. The Thane of Cawdor liues:
Why doe you dresse me in borrowed Robes?
Ang. Who was the Thane, liues yet,
But vnder heauie Iudgement beares that Life,
Which he deserues to loose.
Whether he was combin'd with those of Norway,
Or did lyne the Rebell with hidden helpe,
And vantage; or that with both he labour'd
In his Countreyes wracke, I know not:
But Treasons Capitall, confess'd, and prou'd,
Haue ouerthrowne him.
Macb. Glamys, and Thane of Cawdor:
The greatest is behinde. Thankes for your paines.
Doe you not hope your Children shall be Kings,
When those that gaue the Thane of Cawdor to me,
Promis'd no lesse to them.
Banq. That trusted home,

     ……  下書き,今は,こゝまで.以下,メモおよび資料.……

      王土を守る,この大戰(おほいくさ)にての.
      この大いなる,王土の
     
そなたを讚(たゝ)へ,
      我が王の,この大いなる守りの戰(いくさ)にて,
王國の,
降り積む霰と  斯くは霰と  これぞ霰と  降り募る霰もかくやと
降り募る霰に紛う,次〻の報せ.紛うや霰と  まさに霰と まさにも霰と あたかも霰 成すや霰と  積もるや霰と    …相繼(つ)ぐ報せは

Wind rose File:Compass thumbnail.jpg  Macbethwikipedia より

     Thunder. Enter the three Witches.
1. Where hast thou beene, Sister?
2. Killing Swine.
3. Sister, where thou?
1. A Saylors Wife had Chestnuts in her Lappe,
And mouncht, & mouncht, and mouncht:
Giue me, quoth I.
Aroynt thee, Witch, the rumpe-fed Ronyon cryes.
Her Husband's to Aleppo gone, Master o'th' Tiger:
But in a Syue Ile thither sayle,
And like a Rat without a tayle,
Ile doe, Ile doe, and Ile doe.
2. Ile giue thee a Winde.
1. Th'art kinde.
3. And I another.
1. I my selfe haue all the other,
And the very Ports they blow,
All the Quarters that they know,
I'th' Ship-mans Card.
Ile dreyne him drie as Hay:
Sleepe shall neyther Night nor Day
Hang vpon his Pent-house Lid:
He shall liue a man forbid:
Wearie Seu'nights, nine times nine,
Shall he dwindle, peake, and pine:
Though his Barke cannot be lost,
Yet it shall be Tempest-tost.
Looke what I haue.
2. Shew me, shew me.
1. Here I haue a Pilots Thumbe,
Wrackt, as homeward he did come.
             Drum within.
3. A Drumme, a Drumme:
Macbeth doth come.
All. The weyward Sisters, hand in hand,
Posters of the Sea and Land,
Thus doe goe, about, about,
Thrice to thine, and thrice to mine,
And thrice againe, to make vp nine.
Peace, the Charme's wound vp.
             Enter Macbeth and Banquo.
Macb. So foule and faire a day I haue not seene.
Banquo. How farre is't call'd to Soris? What are these,
So wither'd, and so wilde in their attyre,
That looke not like th' Inhabitants o'th' Earth,
And yet are on't? Liue you, or are you aught
That man may question? you seeme to vnderstand me,
By each at once her choppie finger laying
Vpon her skinnie Lips: you should be Women,
And yet your Beards forbid me to interprete
That you are so.
Mac. Speake if you can: what are you?
1. All haile Macbeth, haile to thee Thane of Glamis.
2. All haile Macbeth, haile to thee Thane of Cawdor.
3. All haile Macbeth, that shalt be King hereafter.
Banq. Good Sir, why doe you start, and seeme to feare
Things that doe sound so faire? i'th' name of truth
Are ye fantasticall, or that indeed
Which outwardly ye shew? My Noble Partner
You greet with present Grace, and great prediction
Of Noble hauing, and of Royall hope,
That he seemes wrapt withall: to me you speake not.
If you can looke into the Seedes of Time,
And say, which Graine will grow, and which will not,
Speake then to me, who neyther begge, nor feare
Your fauors, nor your hate.
1. Hayle.
2. Hayle.
3. Hayle.
1. Lesser then Macbeth, and greater.
2. Not so happy, yet much happyer.
3. Thou shalt get Kings, though thou be none:
So all haile Macbeth, and Banquo.
1. Banquo, and Macbeth, all haile.
Macb. Stay you imperfect Speakers, tell me more:
By Sinells death, I know I am Thane of Glamis,
But how, of Cawdor? the Thane of Cawdor liues
A prosperous Gentleman: And to be King,
Stands not within the prospect of beleefe,
No more then to be Cawdor. Say from whence
You owe this strange Intelligence, or why
Vpon this blasted Heath you stop our way
With such Prophetique greeting?
Speake, I charge you.
     Witches vanish.
Banq. The Earth hath bubbles, as the Water ha's,
And these are of them: whither are they vanish'd?
Macb. Into the Ayre: and what seem'd corporall,
Melted, as breath into the Winde.
Would they had stay'd.
Banq. Were such things here, as we doe speake about?
Or haue we eaten on the insane Root,
That takes the Reason Prisoner?
Macb. Your Children shall be Kings.
Banq. You shall be King.
Macb. And Thane of Cawdor too: went it not so?
Banq. Toth' selfe-same tune and words: who's here?
    Enter Rosse and Angus.
Rosse. The King hath happily receiu'd, Macbeth,
The newes of thy successe: and when he reades
Thy personall Venture in the Rebels sight,
His Wonders and his Prayses doe contend,
Which should be thine, or his: silenc'd with that,
In viewing o're the rest o'th' selfe-same day,
He findes thee in the stout Norweyan Rankes,
Nothing afeard of what thy selfe didst make
Strange Images of death, as thick as Tale
Can post with post, and euery one did beare
Thy prayses in his Kingdomes great defence,
And powr'd them downe before him.
Ang. Wee are sent,
To giue thee from our Royall Master thanks,
Onely to harrold thee into his sight,
Not pay thee.
Rosse. And for an earnest of a greater Honor,
He bad me, from him, call thee Thane of Cawdor:



King. No more that Thane of Cawdor shall deceiue
Our Bosome interest: Goe pronounce his present death,
And with his former Title greet Macbeth.
Rosse. Ile see it done.
King. What he hath lost, Noble Macbeth hath wonne.
                       Exeunt.


King. Great happinesse.
Rosse. That now Sweno, the Norwayes King,
Craues composition:
Nor would we deigne him buriall of his men,
Till he disbursed, at Saint Colmes ynch,
Ten thousand Dollars, to our generall vse.


Who comes here?
Mal. The worthy Thane of Rosse.
Lenox. What a haste lookes through his eyes?
So should he looke, that seemes to speake things strange.
Rosse. God saue the King.
King. Whence cam'st thou, worthy Thane?
Rosse. From Fiffe, great King,
Where the Norweyan Banners flowt the Skie,
And fanne our people cold.
Norway himselfe, with terrible numbers,
Assisted by that most disloyall Traytor,
The Thane of Cawdor, began a dismall Conflict,
Till that Bellona's Bridegroome, lapt in proofe,
Confronted him with selfe-comparisons,
Point against Point, rebellious Arme 'gainst Arme,
Curbing his lauish spirit: and to conclude,
The Victorie fell on vs.


If I say sooth, I must report they were
As Cannons ouer-charg'd with double Cracks,
So they doubly redoubled stroakes vpon the Foe:
Except they meant to bathe in reeking Wounds,
Or memorize another Golgotha,
I cannot tell: but I am faint,
My Gashes cry for helpe.
King. So well thy words become thee, as thy wounds,
They smack of Honor both: Goe get him Surgeons.
Enter Rosse and Angus.
Who comes here?
Mal. The worthy Thane of Rosse.

逍遙譯)
ダンカ 手傷と言ひ、申すことゝいひ、 汝そちはあっぱれな 武士さむらひぢゃぞ。 ……(侍者に)それ、彼れの爲に外科醫どもを……
    侍者らが武官を介抱して入る。
( 彼方むかうを見て)來たのは誰れぢゃ?
    貴族ロッスの領主が出る。
マルコ ロッスの領主どのです。

King. What bloody man is that? he can report,
As seemeth by his plight, of the Reuolt
The newest state.
Mal. This is the Serieant,
Who like a good and hardie Souldier fought
'Gainst my Captiuitie: Haile braue friend;
Say to the King, the knowledge of the Broyle,
As thou didst leaue it.
Cap. Doubtfull it stood,
As two spent Swimmers, that doe cling together,
And choake their Art: The mercilesse Macdonwald
(Worthie to be a Rebell, for to that
The multiplying Villanies of Nature
Doe swarme vpon him) from the Westerne Isles
Of Kernes and Gallowgrosses is supply'd,
And Fortune on his damned Quarry smiling,
Shew'd like a Rebells Whore: but all's too weake:
For braue Macbeth (well hee deserues that Name)
Disdayning Fortune, with his brandisht Steele,
Which smoak'd with bloody execution
(Like Valours Minion) caru'd out his passage,
Till hee fac'd the Slaue:
Which neu'r shooke hands, nor bad farwell to him,
Till he vnseam'd him from the Naue toth' Chops,
And fix'd his Head vpon our Battlements.
King. O valiant Cousin, worthy Gentleman.
Cap. As whence the Sunne 'gins his reflection,
Shipwracking Stormes, and direfull Thunders:
So from that Spring, whence comfort seem'd to come,
Discomfort swells: Marke King of Scotland, marke,
No sooner Iustice had, with Valour arm'd,
Compell'd these skipping Kernes to trust their heeles,
But the Norweyan Lord, surueying vantage,
With furbusht Armes, and new supplyes of men,
Began a fresh assault.
King. Dismay'd not this our Captaines, Macbeth and
Banquoh?
Cap. Yes, as Sparrowes, Eagles;
Or the Hare, the Lyon:
If I say sooth, I must report they were
As Cannons ouer-charg'd with double Cracks,
So they doubly redoubled stroakes vpon the Foe:
Except they meant to bathe in reeking Wounds,
Or memorize another Golgotha,
I cannot tell: but I am faint,
My Gashes cry for helpe.
King. So well thy words become thee, as thy wounds,
They smack of Honor both: Goe get him Surgeons.
Enter Rosse and Angus.
Who comes here?
Mal. The worthy Thane of Rosse.
Lenox. What a haste lookes through his eyes?
So should he looke, that seemes to speake things strange.
Rosse. God saue the King.
King. Whence cam'st thou, worthy Thane?
Rosse. From Fiffe, great King,
Where the Norweyan Banners flowt the Skie,
And fanne our people cold.
Norway himselfe, with terrible numbers,
Assisted by that most disloyall Traytor,
The Thane of Cawdor, began a dismall Conflict,
Till that Bellona's Bridegroome, lapt in proofe,
Confronted him with selfe-comparisons,
Point against Point, rebellious Arme 'gainst Arme,
Curbing his lauish spirit: and to conclude,
The Victorie fell on vs.
King. Great happinesse.
Rosse. That now Sweno, the Norwayes King,
Craues composition:
Nor would we deigne him buriall of his men,
Till he disbursed, at Saint Colmes ynch,
Ten thousand Dollars, to our generall vse.

King. No more that Thane of Cawdor shall deceiue
Our Bosome interest: Goe pronounce his present death,
And with his former Title greet Macbeth.
Rosse. Ile see it done.
King. What he hath lost, Noble Macbeth hath wonne.
Exeunt.

5 將校の臺詞 First Folio (F1) の原文は As whence the Sunne 'gins his reflection, Shipwracking Stormes, and direfull Thunders: So from that Spring, whence comfort seem'd to come, Discomfort swells だが,his reflection とは,春分の時期に於ける太陽の變化すなはち日出没の位置の戾り,晝(ひる)と夜の長さの入替り,つまりは『折返し』の事である.隨 つて,ここに言ふ that Spring の Spring とは,まさに『春』のことで,森 鷗外譯なども誤解してゐるが,『泉』のことでは無い.その他,知る限りの譯本で誤譯となつてゐる.まあ,ともかく歐米の校訂家からして his reflection を理解し損ねてゐるのだから,致し方のない事ではある.(たとへば,戰後の飜譯底本として多大な影響力を持つた Dover Wilson の校訂本では,原文である F1 が Spring と大文字で始めてゐるにも拘らず,spring と小文字表記に變へて『泉』の意として仕舞つてゐる.これでは讀者が誤解するのを避けられぬ.校訂本の,常識から判斷して不可解な解説などに關しては,まづは『怪しい』と知るべきであらう.ともかくも,何事によらず『一次資料』に當たる事が最重要と言ふ事である.と,自戒する次第.)


Macb. So foule and faire a day I haue not seene.
荒ぶと見えるや晴れ渡る,
荒ぶと思ふや晴れ渡る
晴れとなる
荒ぶと見せて晴れとなる,

荒ぶやら,晴れる,

荒ぶと思へば晴れ渡る日など,初めて目にした.


太陽が,冬より春に轉ずるや,

    太陽が,春の日の出に轉ずるや,
    船を覆す,時化(しけ)や恐ろしき雷鳴とか.
    同じき春の泉より,安らぎの湧かう折には,
    禍事(まがごと)も頭を擡(もた)ぐ.
    お聽きを,スコットランド王,どうか.
    

    恰も冬の太陽の折返すところより,船を覆す時化(しけ)
    また恐ろしき雷鳴が.つまりは春の訪れの,
    春の訪れ

日の出が春へと轉ずるや,
太陽が,春の日の出に轉ずるや,


逍遙譯)
武官 然るところ、 譬たとへば、 旭日あさひのさし昇る東方から、 怖ろしい 霹靂いかづちや船を 摧くだく大あらしの起りまする如く、 身方みかたが慰安の源泉から、 思ひがけない不安が湧き出でました。

逍遙譯)
さるほどに、官軍が、 正義を 補たすくるに武勇を以てし、逃足輕き輕裝兵をさん〜゛ 打敗うちやぶりましたる其途端に、 隙を 窺うかゞうたるノーヱー王、研ぎ立ての武噐と新手の兵とで、又ぞろ攻めかゝってまいりました。

逍遙譯)
正直に申し上ぐれば、兩將軍は、 宛然まるで二重に 裝彈たまごめをした大砲か何ぞのやうに、 二層倍の勢ひで敵軍に當られました。血の海で 浴ゆあみばなされる積りか、 でなくば第二の髑髏が丘を築かれまするかと存ずる程の凄じいお働き、…… が、息苦しうなりました、傷口が痛んで叶ひません。




2012年10月27日土曜日

『ハムレット』第16場(4幕5場とも)について.その2

                                      

『ハムレット』第16場(4幕5場とも)について.その2

さて,ともかくも,かうして 第16場 の飜譯を始めたのだが,早速に Ophelia の臺詞に戸惑はされた.(まあ,戸惑ひは,僕の飜譯作業では,うんざりするほど,每度の事ながら…)

第16場 の冒頭場面で,Ophelia は,かう言つて,登場する.

Oph. Where is the beautious Maiestie of Denmarke?

この臺詞を,皆さんは,どう聽くのだらうか.

一般的に,まあ,常識的に考へてといふことであるが,beautious などの言葉を交へて人を搜すなど,遣(や)らぬことである.しかも the を附けて,beautious Maiestie( = Majesty ) などゝ,『普通』の臺詞ではない.たとへばである,いかに女王への呼掛けであるにしても,『世辭』が餘りに過ぎまいか.

一つの考へ方としては,この時 Ophelia は,すでに『狂氣』の狀態にあるからだとの見方,解説が有り得よう.と言ふよりも,それを,『最終的な答へ』として仕舞ふ考へ方だ.所詮は『狂氣』の爲せる,取留めの無い言葉といふ譯だ.つまり作者は,單に『狂氣』の一般的な『見本』を呈示したに過ぎぬと言ふのである.

はて,しかし,Shakespeare は,その程度の劇作家であつたのか.それではまるで素人が,『學藝會』用にでも拵へた,臺本ではないか.『狂氣』を患ひ,はじめて觀客の前にすがたを現はす折に,「はい,この通り,お定まりの『氣違ひ』になりました」では,あまりに情無い手法である.芝居と言ふものゝ,『あるべき流れ』として見た場合にも,僕としては受け容れ難く,飜譯作業が,阿呆らしく感ぜられたのだ.生意氣は承知ながら.

『芝居』はますます,『深み』へと嵌(はま)る人〻を描いて行くべきところであるのに,『お約束の段取り』などで,初演當時の『見巧者』なるものは,滿足したのか.Shakespeare は,その程度の觀客を,相手に芝居を書いたのか.こゝは,どうあらうとも,『衝擊的』な登場で無くてはならぬ筈である.いはゆるコントの類ひであつても,『あるべき流れ』の『定石』は,蹈 み外すまいに.

…などなどゝ,僕の不滿は,募る一方の有樣であつた.

さて,その他に…… (次囘へ,續く)


2012年10月23日火曜日

『ハムレット』第16場(4幕5場とも)について.その1

                                      

『Shakespeare の臺詞は,どう『詠まれる』べきか.』などゝ書き始めたところ問題が,『續出』といふか,實は,本題の『結論』が朗唱上の些事わたり,あまりに呆氣(あつけ)無くなりさうで,更には『日本語』の問題が,あれこれ眼につき手が止り,そこで些と『お休み』にして,『ハムレット』飜譯のことを,書く.(まあ,既に長〻休んではゐるが…)


『ハムレット』第16場(4幕5場とも)の解説について.その1

(『加筆』は Scene 16 で確認のほどを…と.)

僕の飜譯では,Scene 16 の冒頭,狂つて登場するオフィーリアにつき,歌を除く臺詞に關しては,ほとんど『自身がポローニアスとなり周圍に應對する』ことゝしてある.狂氣となつての一度目の登場の事だ.


なほ,同場二度目の登場では,逆に臺詞の殆どは,單に『狂女』の振舞ひとなる.(二度目では,一箇所『ポローニアス』として臺詞を言ふ.一度目の『片鱗』を殘してのこと.)


さて,さうした僕の『發想』(と言つても僕は,シェイクスピアはその樣に書いたと信じてゐるのだが…)が生まれた切つ掛けは,僕が從來の飜譯本に,尠くともこの場面につき,『退窟』を覺えた事にある.つまり,「オフィーリアは何故『しつこく』も,二度にわたり,同じやうな『狂氣』の姿で登場するのか…」と,不思議でならなかつたのだ.


また,もしこの役を,僕(まあ,若き日の僕)が演ずるとなつたなら(因みに僕は『女優』に殆ど興味無く,『生身の女は芝居を毀す』論者である.あくまで『女優』に關してだが),「どの『面(つら)』をさげて二度にわたり出て良いものやら」と,戸惑ひ,途方に暮れた事であらう,などゝ想像したりもした.だとすれば,「シェイクスピアはこの場の『處理』に,ドジを蹈 んだか…」とまで,考へたのだ.


以上は,この場を譯し始めるまでの『感想』である.


はて,しかし,ハムレットの飜譯本を讀まれる方〻は,さうした思ひを抱かぬものだらうか.『退窟』を覺えぬものか.『世界的名作』などゝ,構へて讀まずに見たならば,二度に分けての登場は,たゞそのまゝでは,舞臺が『ダレる』とは思はぬものか.日本語譯では『女言葉』で譯される爲,なかなか『疑問』を插(さしはさ)むのは,難しからうが….



(ついては皆〻樣より,コメントを賜りたく「乞ひ願ひ奉りまする」の次第にて…)


(この項,續く)

2012年6月7日木曜日

Shakespeare の臺詞は,どう『詠まれる』べきか.(4)の補の補.

                                      
Shakespeare の臺詞は,どう『詠まれる』べきか.(4)の補の補.

前囘「(4)の補として.」で,僕が拍数を『指折數へた』短歌といふのは,石川啄木の歌であつた.これを憶ひ出したのは,小中學の授業で刷込まれたせいであらう.

ふるさとの訛りなつかし
停車場の人ごみの中に
そを聽きにゆく

この歌の「そを聽きにゆく」は七拍での言ひ切りとなる.この爲『八拍目』の指が,宙に浮く.僕は『八拍目』が消えることも起るのだらうか,すは一大事と,まづは困り果てたのだ.

それが誤解であつたと判明した理由は,前囘記したとほり,『二度詠み』を思ひ附いたからである.歌を續けて二度詠まうとすると,必ず最終句の末に,いはゞ『休符』を入れないと,次が續かない.無理遣り立續けに詠むと,『棒讀み』にならざるを得ない.趣きも何も消し飛ぶことゝなる.

つまり『八拍目』は,單に『文字』を持たなかつただけで,消えてなくなつた譯ではないのである.

この歌を,例により,黑丸附きで表記すると,以下のやうになる.

ふるさとの ● ● ● /
 ● なまりなつかし /
ていしャばの ● ● ● /
ひとごみのなかに /
そをきゝにゆく● /

『八拍』のリズムは,やはり,この歌の全體を『蔭で支配』してゐると言つて良い.

また,四句目は,いはゆる,『七文字』との縛りから言へば『字あまり』であるが,何ら違和感を抱かせぬ.本來の八拍を,餘すこと無く用ゐたといふだけの事だからだ.

ところで僕は,前囘の『補足』を書いた時點では,「短歌および和歌の類ひは.すべて最終句末に『休符』が附くもの」と,生來の粗忽がたゝり,早吞込みして文を綴つてゐる.

しかし,「すべて」では無く,他に,句頭に『休符』を置き,第八拍目で句切り良く終るものもある.こちらは,續けて二度詠まうとも,歌の趣きを損ふことは無い.リズムが保たれるためである事は,言ふまでもない.例を,以下に,『黑丸』附きで示す.

こちふかば ● ● ● /
 ● にほひおこせよ/
うめのはな ● ● ● /
 ● あるじなしとて /
 ● はるなわすれそ /    菅原道眞 (初出は「はるをわするな」)

こゝろなき ● ● ● /
 ● みにもあはれは /
しられけり ● ● ● /
しぎたつさはの ● /
 ● あきのゆふぐれ /    西行




2012年6月4日月曜日

Shakespeare の臺詞は,どう『詠まれる』べきか.(4)を補足し.


                                      

Shakespeare の臺詞は,どう『詠まれる』べきか.(4)を補足し.

昨日の投稿で,「短歌については…俳句の延長線上にあるものとして…採上げない」と書いてはみたが,念の爲と,指折り數へて『八拍』リズムを確かめたところ,どれも最終句が,『七拍』で終り,『音沙汰無し』となる.

これはいつたい如何なる事か,『八拍目』殿はいづこへ御出掛けと,思案投げ首,すること暫し,わけが判明した.

實は『御出掛け』などではなくて,『お休み』中であつたのだ.

それを知るには,どの短歌でも良い,二度繰り返して詠んでみれば,『御在宅』とたちまち知れる.

すなはち次の『詠み』に入る折,無視をする事,かなはぬ『間』が出來る.これこそ,まさに,『八拍目』殿の『御座所』なのである.

はて,御理解を,得られますやう.      …と,店主 謹言 恐惶頓首す.


2012年6月3日日曜日

Shakespeare の臺詞は,どう『詠まれる』べきか.(4)


                                      

Shakespeare の臺詞は,どう『詠まれる』べきか.(4)

ところで,こゝ迄で,俳句と歌舞伎の臺詞を採上げて來たが,短歌については,この問題に關してゞあるが,俳句の延長線上にあるものとして捉へ,殊更考へてはみなかつたが,これからも採上げることはないと思ふ.短歌を嗜む方〻には御赦しを願ふ.

本題に戾る.

以上のことから,僕としては,日本語に馴染みの深い『七五調』の歌や臺詞の類ひには,その背後に,一小節または一句八拍からなるリズムが隱されてゐるものと『斷定』してみることゝした.

そんな折,ある時,前(さき)に採上げた,松尾芭蕉の『かはづ』の俳句を,英譯したものに出遇つたのだ.この英文である.ひとつ,實際に,聲に出して詠んで戴きたい.

An old silent pond... / 
A frog jumps into the pond, / 
splash!  Silence again. /

いかゞであらう.いさゝか戸惑はせる部分は jumps into the を續け樣(ざま)に詠むといふところであらうか.

僕は大いに感心させられた.譯者の言葉の選び方,殊には splash! といふ語の齎す印象の鮮やかさに驚かされたが,それはともかく,全體の『調子』につき,俳句の『五七五』を思はせる響きが感じられたからだ.これは既に, 1973年に 74歲で故人となられた Harry Behn といふアメリカの作家の手になる飜譯である.

さて,同じやうな『響き』を持つならば,件(くだん)の『一句八拍』のリズムは,この英譯ではどのやうに作用してゐるのであらう.早速,この英文に『間』を示す(●)を施してみた.その結果が,これである.

An old silent pond... ● ● / 
A frog jumps into the pond, ● ●/ 
● splash!  ● Silence again. ● ●/

ところがだ.どうもこの分け方が氣に入らない.不定冠詞の An と A が,邪魔なものに思へてならない.頭の中では,英文に附き物の『冠詞』の類ひと考へるのだが,どうにも間怠い.しかも,Iambic(弱強格)から見た場合,いづれも『弱拍』扱ひである.その『弱拍』を文の頭に戴いて,よくまあ英文種族といふものは,我慢強いものであるなあと,考へた時に,『奇策』が閃いた.

そもそも『弱拍』といふ『附けたり』扱ひのものであるなら,必ずや,彼ら英文人種も發音の際,これに重きを置いてゐない筈,と考へたのだ.といふのも,かねがね,Shakespeare の原文を詠み上げる折,冒頭にある And などを,前行末尾に上手く續けて發音すると,登場人物の思考の流れが途切れることなく,生き生きとして來るとの經驗があつたからである.いや,Shakespeare に限らなくとも,日常の『英會話』では,頻繁に起る現象である.そして,だからこそ,臺詞に潑溂とした息吹が附與されるのだ.

といふ譯で,以上のやうな,擦つた揉んだを繰り返して後,次のやうに英文を分解してみた.

An / 
Old silent pond... ● ● A / 
Frog jumps into the pond, ● ● ● / 
Splash!  ●  Silence again. ● ● ● /

[『句頭』の印象を強めるために,本來は『小文字』で書かれた單語を,『大文字』にした.御諒承のほどを.]

つまり,An や A といふ『弱拍』ものを,前小節に繰入れた,または追ひ出した上での『八拍リズム』の完成である.

いかゞであらう.詩の印象が,前(さき)の分け方より,鮮やかになつたと思へないだらうか.筆者は秘かに,『手前味噌』の『危險』を怖れつゝ,幾度もこれを詠み返しては,頷いてゐるのだが….
--- 續く ---


Shakespeare の臺詞は,どう『詠まれる』べきか.(3)

                                      

Shakespeare の臺詞は,どう『詠まれる』べきか.(3)

さて,俳句の背後には『八拍』のリズムがあるとなると,では,歌舞伎の臺詞はどうであるかが氣になり,そこで唯一,ほゞ丸のまゝ,臺詞囘し(口跡)を記憶してゐる『假名手本忠臣藏六段目』にある,切腹直後の勘平の臺詞で試してみることゝした.

以下が,その結果である.

如何なればこそ ● / 勘平は ● ● ● /
三左衞門が ● / 嫡子と生れ ● /
十五の歲より / 御近習(ゴキンジュ)勤め ● /
● 百五十石(ヒャクゴジッセキ) / 頂戴なし ● ● /
代々鹽谷(エンヤ)の / 御扶持を受け ● ● /
束ぬ間御恩を / 忘れぬ身が ● ● /
● 色(イロォ)(ニィィ) ● /
● 色に耽つた / ばつかりに ● ● ● /
大事の場所にも / あり合はさず ● ● /
その天罰(テンバッ)にと / 心を碎き ● /
(オン)仇討ちの ● / 連判に ● ● ● /
加はりたさに ● / 調達(チョウダッ)の ● ● ● /
● 金も返つて / 石瓦(イシカワラ) ● ● ● /
(イスカ)の嘴(ハシ)ほど / 食ひ違(チゴ)う ● ● ● /
言ひ譯無さに ● / 勘平が ● ● ● /
切腹 ● なして/ あひ果つる ● ● ● /
心のうちの ● / 苦しさを ● ● ● /
御兩所方 ● ● /
● 御推量下さりませ.

[こゝに採上げたものは,昭和四十五年,三宅坂國立大劇場において,當時の尾上菊之助(現菊五郎丈)の勤めた勘平の臺詞を寫したものです.僕に『記憶違ひ』があれば,指摘下さるやう,願ふ.]

いかゞであらうか.末尾こそ『破調』となり,話し言葉に戾るが,他はすべて『八拍』を,いはゞ,『一小節』とするリズムの繰り返しであることが判る.また,臺詞の速度が變る場合,殆どは『小節』每の變化となる.

その後,この他にも,典型的な『七五調』である河竹默阿彌の『弁天小僧』の臺詞も試してみた.

知らざあ言つて ● / 聞かせやせう ● ● ● //
● 濱の眞砂と / 五右衞門が ● ● ● /
● 歌に殘せし / 盗人の ● ● ● /
● 種は盡きねえ / 七里ヶ濱 ● ● /
その白浪の ● / 夜働き ● ● ● /
以前を言やあ ● / 江ノ島で ● ● ● /
● 年季勤めの / 稚児が淵 ● ● ● /
百味講(ヒャクミ)で散らす ● / 蒔き錢を ● ● ● /
● あてに小皿の / 一文講 ● ● /
● 百が二百と / 賽錢の ● ● ● /
● くすね錢せえ / 段々に ● ● ● /
惡事はのぼる ● / 上の宮 ● ● ● /
岩本院で ● / 講中の ● ● ● /
● 枕搜しも / 度重なり ● ● /
お手長講と ● / 札附きに ● ● ● /
たうとう島を ● / 追ひ出され ● ● ● /
それから若衆(ワカシュ)の / 美人局(つゝもたせ) ● ● ● /
● こゝやかしこの / 寺島で ● ● ● /
小耳に聞いた ● / 爺さんの ● ● ● /
似ぬ聲色で ● / こゆすりかたり ● /
● 名せえゆかりの / 弁天小僧 ● /
● 菊之助たあ /
● 俺がことだあ /

まさにこれは,きつちりと,末尾に至るまで『一小節八拍』のリズムが繰り返されてゐる.また,その他の特徵としては,句頭に『間』をとるものが多い.いづれも,勘平のやうな『無念』の思ひや,必死な『心情の吐露』とは異なり,相手へ『凄み』を利かせる爲の『口上』だからでせう.

なほ,『小節』ごとに詠まれる速さに違ひの出ることは,勘平の臺詞の場合と同樣です.

---  續く---

2012年6月2日土曜日

Shakespeare の臺詞は,どう『詠まれる』べきか.(2)

                                      

Shakespeare の臺詞は,どう『詠まれる』べきか.(2)

切つ掛けは,こんなところにあつた.

日本の俳句は,五七五,つまり十七文字でつくられてゐると誰でもが言ふ.なるほど讀めば,字あまりの句は別として,そのとほりである.たとへば…

「ふるいけや かはづとびこむ みづのおと」芭蕉

しかしだ.たしかに目で追へば十七文字だが,これを聲にすると『間』が必要となる.いつたい,この『間』とは何なのか.そこで,文字1音分を1拍として,『間』の部分を黑丸(●)で埋めてみた.

すると…

/ふるいけや●●● / ●かはづとびこむ / みづのおと●●● /

とするのが,最も適切であると考へた.そして次に…

「さみだれを あつめてはやし もがみがは」芭蕉

の句も,この方法で表記してみた.すると…

/さみだれを●●● / あつめてはやし● / もがみがは●●● /

となつた.

如何であらう.この二つの例を見ると,なるほど『文字』は十七であるが,實は僕たちは,知らず知らずに『八拍のリズム』を刻んで句を『詠んでゐる』のだと言へないだらうか.

つまりである.あくまでも,不定形に見える『五七五』といふ文字の背後に,規律正しい『リズム』が存在する.

となると,である.俳句はたしかに十七の『文字』を用ゐるが,實は,『間』を含めれば,『八拍』×3,都合24拍のうちに,十七の文字を配して作られた『詩』といふことが言へるのである.(續く)



2012年6月1日金曜日

Shakespeare の臺詞は,どう『詠まれる』べきか.(1)

                                      

Shakespeare の臺詞は,どう『詠まれる』べきか.

このところ,シェイクスピアの原文は,如何に讀まれる(朗唱される)べきかを考へ續けてゐたのだが,やうやく解決の絲口が見出せさうなところまで,漕ぎ着けることが出來たので,こゝに幾つかの例を擧げて,その方向性を示してみようと考へた.

シェイクスピアの臺詞といふと,すぐ引合ひに出されるのが blank verse である.その特徵は『弱強(または強弱)五步格』にあると言ふ.iambic pentameter である.つまり,一行の臺詞の中には,弱拍と強拍があり,弱く發音するところと強く發音すべきところが,交互に五囘づゝ出現するといふのだ.

たとへば,とあるシェイクスピア硏究者のサイトでは,Twelfth Night 冒頭の Duke の臺詞を引き,次のやうに解説してゐる.なほ,△ は『弱拍』,▼ は『強拍』を意味する.

△ ▼  △ ▼  △   ▼   △  ▼     △   ▼
If mu-sic be the food of love, play on.

そして,これに補足して「強い音は長くひっぱるように読むと一層音楽的になる。」としてゐる.

なるほど,これらの説明は,blank verse の大まかな特徵の解説としては,よく見掛けもし,尤もなものではあらうが,では一體,補足の文にある「強い音は長くひっぱるように」とは,どの程度の事を言ふのか,いさゝか雲を攫(つか)むやうな話ではなからうか.

「それを上手く熟(こな)す者こそ,シェイクスピア役者.舞臺に學べ」などの考へ方もあり得ようが,誰でもが,舞臺に接する事の出來る環境にある譯ではない.そして更にである,その『舞臺』といふのが曲者で,演ずる役者により朗唱法は樣〻で,異なるからだ.果して何を『基準』として,役者の巧拙を判斷すれば良いのだらうか.何とは無しの『好み』で解決すればよいのか.

さてである.かうした『五里夢中』の思ひは,Hamlet の飜譯を了へた僕の心にも,長らく憂鬱な影を落し,惱みの種となつてゐた.どうにかこの問題に決著がつかぬものかと『七顚八倒』の有樣であつた.

それがである,ひよんな事から,ある解決法を見出すことが出來た.その方法を用ゐれば,難無く blank verse なるものを,といふより Shakespeare の臺詞の魅力を,心から,理解出來る.つまり,まつたく別の觀方から臺詞を眺めることで,ほゞ誰にでも,感動を呼び起こす事の出來る朗唱法を手に入れる事が出來る.これは,僕にとつては望外の『發見』であつた.

ただし,例によつて,この方法は僕の『獨斷』によるもので,海のものとも山のものとも,この先さらに分析と解説を進めてみなければ,定かではない點はある.だが,尠くともこの僕は,その『朗唱法』で,あらためて Shakespeare の臺詞に感動を覺えたのだ.

耳を傾けて戴く程度には,魅力のある『説』または『冐險の旅』であると,密かに確信する.その詳細は,次囘以降.乞ふ,ご期待をと….


[なほ,この『冐險の旅』は,twitter での『友』,@tonchi_jin こと根本利巳氏との交流により,現在の『地點』にまで辿り著く事が出來たものである.僕のやうな奇妙な『友』に附合ひ,樣〻なインスピレイションを授けて下さり續ける根本氏に,感謝.これからも,よろしくと,願ふ次第にて….            neverneverland0]