ハムレット Hamlet 飜譯一覽
Scene 12
國王,女王と ローゼンクランツ,ギルデンスターン 出る.
1 國王. 只ならぬ溜息と苦しげな息遣(づか)ひ.さあ,その譯(わけ)を.
Scene 1 Scene 2 Scene 3 Scene 4 Scene 5
Scene 6 Scene 7 Scene 8 Scene 9 Scene 10 Scene 11
Scene 12 Scene 13 Scene 14 Scene 15 Scene 16 Scene 17 Scene 18
Scene 19 Scene 20
『マクベス Macbeth(下書き)』は,こちら.
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Scene 19 Scene 20
『マクベス Macbeth(下書き)』は,こちら.
國王,女王と ローゼンクランツ,ギルデンスターン 出る.
こちらも知つて置く方が.どこだ,お前の子は.
ガート. どうかこの場は,暫く二人に. ローゼ.とギルデ. 退る.
[ガートルードがクローディアスにどのやうな報吿をするのか,
觀客としては氣掛りな場である.]
あゝ,あなた,どうしたら.何をまた,この眼に,今宵.
國王. 何をだ,ガートルード.で,ハムレットは.
ガート. 氣が觸(ふ)れて,あたかも大海原と大(おほ)風の,
力を競はう,荒(あ)れ荒(すさ)び.と,その,狂ふた最中(さなか),
壁掛けの裏に物音を聽き,劔(つるぎ)を拔くや,
鼠め,鼠と叫び立て,つひに己の思ひ込みから,
見もせで,あの年寄りの命を奪ひ.
5 國王. おゝ,何たる事を.この身も同じ目に,もしやゐたなら.
あれを放(はな)ち置くは,竝(な)べての怖れ.お前は固(もと)より,
この身や總ての者にとり.あゝ,どう此の血塗(まみ)れた行ひを,
言ひ繕(つくろ)へば.やがて咎(とが)めは,こちらへと.
豫(あらかじ)め思ひ致し,狂ふた若者は閉ぢ籠めて,
離れた處(ところ)へ連れ行くべきをと.
が,餘(あま)りにあれが愛(いと)ほしく,
爲(な)すべき事を知らうともせで.悪しき病の持主さながら,
他人(ひと)に明かさず,やがて命は病(やまひ)の餌食に.
で,どこへと,あれは.
ガート. どこか外へと,殺(あや)めた亡骸(なきがら)と.
氣の觸(ふ)れた身で,あたかも一筋,岩膚(はだ)に,
金色(こんじき)の礦脈(くわうみやく)が煌(きら)めく樣に,
無垢な心を示してか,己が仕業(しわざ)に淚して.
[ガートルードは,ポローニアスがハムレットにより殺められたことは傳へたが,その他については,クローディアスに僞りの報吿する.つまり,ハムレットが先王殺害の事實を知つてをり,狂氣を裝ひ,復讎の機會を窺つてゐるとの秘密を隱し通す.ガートルードの心は,まさに,二つに引裂かれたのである.クローディアスは,孤立を深める事となる.]
國王. おゝ,ガートルード,さ,あちらへ.
朝日も間も無く,山の端(は)に.すぐにもあれを,船出させよう.
忌(い)むべき出來事に,王の權威と手立てをつくし,
事無きやうに取り收めねば. そこへ ローゼ. とギルデ.
さ,ギルデンスターン.二人には,誰か他にも扶(たす)けとなる者を.
氣の觸れたハムレットが,ポローニアスを殺(あや)め,
母親の居間から軀(むくろ)を引き摺り,いづこかへ.
あれを探し出せ,言葉穩やかに.そして,亡骸(なきがら)は,
禮拜(らいはい)堂へ.呉〻も速(すみ)やかに. 二人,退る.
さあ,ガートルード,これより王國の諸侯を集め,
豫(あらかじ)め傳(つた)へておかねば,この身の思ひと,
思はぬ此の出來事とを.あらぬ噂は世の果てへまで,
狙ひ定めた砲筒(はうづゝ)さながら,その害毒を運び行かうが,
的となる,こちらの名を逸(そ)れ,傷附く者無き虛空を擊たすべく.
さ,行かう.心は亂(みだ)れ,憂ひは溢れ出むばかりにも.
退る.
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