2011年10月28日金曜日

ハムレット SCENE 11

ハムレット Hamlet 飜譯一覽
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Scene 19 Scene 20

『マクベス Macbeth(下書き)』は,こちら
                                      
Scene 11

ガートルード(女王) と ポローニアス 出る.
[ガートルードの居室 厚地の織物の壁掛けが掛かる.]
1     ポロー. 今,參られます.どうか,きつくに御叱りを.
       惡戲(いたずら)も程が過ぎ,捨て置けぬ.また御自身も,
       今や王の大變なお憤(いきどほ)りと,王子との,
       間(あひ)に立たされてと.わたくしは此の蔭(かげ)に.
       どうか,思はれるまゝを.
                        [壁掛けの裏に隱れる.]
           ハムレット 出る.
    ガート. 分つた,氣遣(きづか)ふな.隱れて.あれの足音が.
    ハムレ. さて,母上,どうされて.
    ガート. ハムレット,そなたが爲,父上は,ひどく御腹立ちに.
5     ハムレ. 母上,母上が爲,我が父上も,ひどくに御腹立ち.
    ガート. またまた,譯(わけ)の判らぬ口を利(き)く.
    ハムレ. いえいえ,筋の通らぬ御口振りゆゑ.
    ガート. なぜまた,然(さ)うして,ハムレット.
    ハムレ. 何が,どうと.
10    ガート. 母を忘れてか.
    ハムレ. いえ,神に懸け,その樣な.これぞ女王にして,
       己(おの)が夫の弟の妻.しかも,あるまい事,我が母上.
    ガート. もう良い.この上は,お前に話の出來る者を.
    ハムレ. またまた.先づ御座りを.なりませぬ,身じろぎも.
       今こゝで,鏡に映る御自身の,胸の中(うち)を,
       目にする迄は.
    ガート. 何をしようと.もしや殺(あや)める氣か.助けを.
15    ポロー. 何と.助けと.誰か.    [壁掛けの裏で,叫ぶ.]
    ハムレ. さては鼠か.蟲けらめ,死ね.[劍を拔き放ち,壁掛けを刺し貫く.]
    ポロー. おゝ,やられた.
    ガート. おゝ,何をまた,して.
    ハムレ. いや,知らぬ事.これは王では.[壁掛けをずらし,確認する]
20    ガート. おゝ,何と輕彈みに,慘(むご)い事を.
    ハムレ. 慘き事とは.その慘さ,王を殺め,同胞(はらから)と,
       契るほどには.
    ガート. 王を殺め.
    ハムレ. 如何にも,慥(たし)かにさうと. 
       さあ,哀れな出過ぎた,道化よ,さらばだ.
       取違へたのだ,お前の主(あるじ)と.これも定め,
       分つたか.世話も過ぎれば命を削る.お止めを,
       手の揉(も)みしだき.靜かに座り,揉みしだくとなら,
       お心をこそ,わたくしが.いまだ心の表は柔らで,
       惡しき慣(なら)ひに鎧(よろ)はれず,人の思ひを頑(かたく)なに,
       拒(こば)み返さぬなら.
    ガート. 何をしたと言ふ.口を窮(きは)め,
       言葉荒げに言ひ立てられる.
25    ハムレ. まさにも,名を穢(けが)し,愼(つゝし)みを捨て,
       美德の女神を僞善と呼ばゝり,その穢れ無き愛を證(あか)す,
       額(ひたひ)の薔薇を引剝(ひきは)がし,賣女(ばいた)を徵(しる)す,
       燒鏝(やきごて)を當(あ)て,夫婦(めをと)の契(ちぎ)りを,
       博徒(ばくと)の誓ひに貶(おとし)めた.おゝ,まさに,
       神の前にて交せし言葉の魂を拔き,淸き禱(いの)りを,
       只の戯(ざ)れ歌扱ひに.天も面(おもて)を赤らめて,
       大地を照らし,地にある總(すべ)ても顏を火照(ほて)らせ,
       神の裁きの日を思ひ,御所業を憂ふる有樣.
    ガート. はて,何をしたと.聲を荒らげ,
       怒りの鉾(ほこ)を拔き打つなど.
    ハムレ. この繪(ゑ)を御覽に.そしてこちらを.
       二つの姿繪(すがたゑ)は,兄と,そして弟のもの.
       それ,何と雅(みやび)な氣高さ溢(あふ)るゝ顔立ちか.
       太陽の神ハイペリオンの卷毛を具(そな)へ,
       額(ひたひ)はジュピターそのまゝに,鋭きその目は,
       戰(いくさ)を指揮する軍神マルス,立てる姿は,
       神の御使(みつか)ひマーキュリーの,今まさに,
       天にも屆かう頂(いたゞき)に,舞ひ降り立てる,
       樣(さま)もかくやと.その一身は,あたかも神〻の,
       證(あかし)を受けしか.これぞ,人たるものゝあるべき姿.
       その方が夫であつたに.さあ,それがどうだ.
       これが今の,あなたの夫.病んだ麥(むぎ)の穗さながらの毒で,
       健(すこ)やかな同胞(はらから)を,枯れ草に.見る目をお持ちか.
       この美しくも豐かな實(みの)りの山を捨て,
       泥沼に餌(ゑ)を漁(あさ)るとは.は,お目はあるのか.
       まさか,戀(こひ)の爲だとは.その御歲なら,
       騷ぐ血潮を手懷(てなづ)けて,愼(つゝし)みと辨(わきま)へを,
       知らうものを.それが,どうすれば,こゝから此れへと.
       物を感じはする.さなくば心も動きますまい.
       が,感じはしても,痲痺(まひ)してゐるのだ.
       氣違ひとても過ちはせぬ.狂つた頭も,か程の狂氣に,
       よも囚(とら)はれず,幾らかほどは事の違ひを見分けませう.
       如何なる惡魔に誑(たぶら)かされて,眼をお塞(ふさ)ぎに.
       眼あらば觸(ふ)れずとも,觸(ふ)れなば見ずとも,
       耳さへあば手や眼は無くとも,聞き分けてさへ.いや,
       狂つた五感の缺片(かけら)程でもお持ちなら,
       よもや,かうした眞似などは.おゝ,何と.
       恥ぢる心は何處(いづこ)へと.地獄の魔の手か.
       辨(わきま)へを知る女をさへも,天に背(そむ)かせる.
       若さに燃ゆる乙女などは,蜜蠟(みつらふ)同然,
       己が焰(ほのほ)で融(と)け落ちよう.今や恥では無いさうな,
       否應(いやおう)も無き慾情の,赴(おもむ)く先へなら.
       それ,冬の霜(しも)さへ燃え出(い)だし,
       理性も情慾を,取持つからは.
    ガート. おゝ,ハムレット,それ迄に.もはや此の眼に,
       己が心はまざまざと.其處(そこ)此處(こゝ)に,
       黑〻とした滲(し)みの數〻.今更消えよう筈も無く.
    ハムレ. いやなに,後は,脂(あぶら)混じりの汗の染み込む寢床にて,
       墮ち行くがまゝ,色に耽(ふけ)られよ,あの豚小屋で.
30    ガート. もう,その先は.言葉の刄(やいば)が,この耳に.
       お願ひだから,ハムレット.
    ハムレ. 人を殺めし極惡人.その賤(いや)しさたる,缺片(かけら)が程も,
       初めの夫に及びも附かぬ,茶番の國王.
       掠(かす)め盗つたる王國と,王の大權.小棚から,
       王の徵(しるし)たる冠(かむり)をくすねて,己(おの)が隱(かく)しへ.
    ガート. 先は,もう.
亡靈 出る.[部屋着姿]
    ハムレ. 雜多な端布(はぎれ)に,著飾る道化の王.
[亡靈の出現に氣附き]
       護(まも)りませ,翳(かざ)す翼で,天の御(み)使ひ.
       何を望まれて,こゝへ.
    ガート. あゝ,氣が觸(ふ)れて.
35    ハムレ. もしや,鈍き步みの我が子を叱りに.
       徒(いたづら)に時を費(つひ)やし,熱を失ひ,
       可惜(あたら)大事の御命令を,遣(や)り過ごしてと.
       お言葉を.
     亡靈. 決して忘るな.この訪(おとな)ひは,たゞ,
       鈍り掛けたる志(こゝろざし)を,硏(と)ぎ直さん爲.
       が,見よ,怖れ戰(をのゝ)く母の姿.それ,仲立ちを.
       母とその,引裂かれたる魂の.か弱き性(さが)には,
       酷(むご)さも募(つの)る.言葉を懸けよ,ハムレット.
    ハムレ. どうなされてと.
    ガート. あゝ,お前がこそ.虛空を見据(みす)ゑ,
       ゐもせぬ者への語り懸け.眼(まな)差しには,たゞならぬ色.
       寢込みを襲はれし武人(ものゝふ)さながら,撫(な)で附く髮も,
       命あるやと逆立ち返つて.おゝ,ハムレット,
       熱く燃え立つ心には,冷たき忍耐の水をこそ.
       何をまた,見詰めてか.
    ハムレ. 父上を,お父上を.それ,何と蒼(あを)白き光を放つて.
       このお姿と譯(わけ)を知れば,心無き,石さへ胸を,
       打たれませう.どうか見詰めずと.その悲しげな御姿に,
       堅き志も飜(ひるがへ)り,色を失ひ,鮮やかな,
       この血の滴(しづく)が,涙に變(かは)らぬやう.
40    ガート. また,誰へと語り懸けて.
    ハムレ. 眼には何も,映らぬと.
    ガート. 何一つ.今あるものゝ他は.
    ハムレ. では,何一つ,その耳に.
    ガート. 何も.たゞ,二人の聲(こゑ)は.
45    ハムレ. それ,あれを.それ,靜やかに步み去る.父上が,
       生きてをられた頃のやうに.それ,あそこに.
       今まだ,戶口を通り.            亡靈,退る.
    ガート. これぞまさに,頭の惡戲(いたづら).ゐもせぬものを,
       あると見せる,まやかしの.
    ハムレ. この脈は,あなたと同じく,時を刻み,健(すこ)やかな,
       樂(がく)を奏でゝ.決して狂氣の言葉などでは.
       試されるが良い,今までの言葉,繰り返しませう.
       物狂ひなら,話の筋も通らぬ筈.母上,心からの願ひ,
       決して魂の上邊(うはべ)のみを取繕(つくろ)ひ,罪ある身などゝは,
       たゞハムレットの,狂氣の物言ひと申されますな.
       どれもいづれ,見掛けを繕(つくろ)ふ塗(ぬ)り藥,病はやがて,
       胸の奧深くに食ひ入つて,眼には映らぬ處(ところ)を蝕(むしば)む.
       罪を懺悔し過ちを悔ひ,新たな罪から遠離(とほざか)られませ.
       よもや雜草に肥やしを與(あた)へ,咽(む)せ返るほどに,
       蔓延(はびこ)らせぬやう.
       [傍白](ゆる)せ,我が心,滿ち足りた今の世の中,
       美德も惡德へ,赦しを乞(こ)はねばならぬのだ.
       それ膝を折れ,邪惡自らに,心改めさせる爲.[跪(ひざまづ)く]
    ガート. おゝ,ハムレット,おまへは此の胸を眞二つに.
    ハムレ. 是非,より惡しき方を捨て,些かなりと,
       淸らかな方を殘し,これからを.おやすみを.

[こゝでハムレットは,ガートルードの此の場での『悔悛』を斷念する.ガートルードは「おやすみを Good night」の臺詞に促され,母親としての『blessing 祝福』を跪くハムレットに與へようとする.この光景は,第3場,ポローニアスが旅立つレイアティーズに『祝福 blessing』を行ふ姿を思ひ起こさせる.前(さき)に作者は,何らの問題も抱へぬ親子關係の典型を,第3場で提示してゐるのだ.が,ガートルードとハムレットとの親子關係は,それとは全く異なる.さて,ハムレットはガートルードの『祝福 blessing』を制して,臺詞を述べる.]

       が,決して叔父の寢床へは.素振りは操(みさを)正しげに,
       心に無くとも.身の慣(なら)ひといふ化け物は,
       辨(わきま)ふ心をも食ひつくさう惡魔だが,
       時には天使ともなつて,淸く正しく振舞はうなら,
       仕著せの服や衣裳の如く,それらしき裝(よそほ)ひへと.
       身の愼(つゝし)みを,今宵本日.すれば明日(あす)は,
       容易(たやす)くに.また次の夜は,更に容易く.
       慣(なら)ひはやがて性(さが)となり,心の中(うち)の,
       惡魔をも追ひ立てる.その驚くべき力によつて.
       今一度,おやすみを.いえ,ご自身心より,
       罪の赦しを求めし時にこそ,私への祝福を願ふことに.

上二行の原文は once more good night, / And when you are desirous to be blest, / Ile blessing beg of you, で,ガートルードは good night の言葉に促され,ふたたび母親としての blessing を爲さうとするが,ハムレットはそれを制して,言葉を續ける.
こゝで交はされる就寢時の挨拶は,今日我〻が簡潔に聲を懸け合ふだけの遣取りでは無い.子が good night と言へば,惡魔も出現するかも知れぬ夜を無事に過ごせる樣にとの神への願ひを,親に乞ふ事を意味する.また,その爲に,跪(ひざまづ)く事ともなるのだが,ところがハムレットは,ガートルードが心の底から悔悛せぬ限り,さうした blessing の儀禮を拒むと言ふ.つまりその間は,母でも無ければ子でも無いとの明確な宣言なのだ.
親子の正常な繋がりを示すかの親から子へのさうした『儀禮』の典型は,第3場のポローニアスとレイアティーズの遣取りに良く表れてゐる.つまり,何ら問題の無い親子關係にあつては,折につけての blessing は缺かせぬものだ.しかるにハムレットはこれを拒む.
ガートルードにとつては,己の生き甲斐であるハムレットを,失ふやも知れぬ瀬戸際に立たされた事となり,この後如何なる道を選ぶかとの大きな課題を背負つた事を意味する.また,觀客の心にも,この後ガートルードがどのやうな『解決』すなはちハムレットへの blessing の時を持つのであらうかとの關心を抱かせる事となつた筈である.そが最終場に至り,不幸な結果を伴なつて行はれる事となるのだが.
ところで,blessing を『祝福』と譯すのは,實は適切では無い.blessing を行ふのは人間であるが,bless するのは人間では無く,神だからだ.もし人間が直接『祝福』したとすると,『呪術』を 行使した事となり,瀆神もしくは異敎徒の振舞ひとなる.あくまで人間に出來得ることは,神による『祝福』を願ふ,もしくは願つてやるところまでゞある.
ハムレットがガートルードに向けて言ふ Good night. も,あくまで May God give you good night. なのであり,言ふまでも無く,Good night を齎すか否かの權威もしくは權限は,神の領域にある.隨つて blessing を行ふ者は,正しき信仰を持つてゐなければならぬのだ.ハムレットが,この時點でのガートルードの blessing を,頑なに拒む理由は,其處にこそある.
この臺詞は,そしてまた,ガートルードに纏(まつは)る物語にとつての『新たな出發點』でもある.やうやく此處から,第5場での亡靈の臺詞

              nor let thy soule contriue
   Again st thy mother ought, leaue her to heauen, 
         And to those thornes that in her bosome lodge
         To prick and sting her,
   (また,母への危害は無用のこと.母は天の裁きに委(ゆだ)ね,
    己が良心の茨(いばら)の棘(とげ)に,苛(さいな)ませよ.)

により示された『ガートルードの悔悛への物語』とでも言ふべき筋立てが始まるのだ.
シェイクスピアのかうした筋立ての造りは,まことに見事である.第9場でクローディアスの罪は確定し,この場ではガートルードの悔悛への物語といふ視點が加はり,更にはポローニアス殺害によるハムレット自身の罪の物語も始まるのである.物語全體は,ますますの厚みを加へられ,如何なる結末を迎へるかとの觀客の興味は,もはや舞臺に釘附けといふ他は無い.

       さて,この御仁には濟まぬ事を.が,天の御(み)心が,
       罰を此の身に此奴(こやつ)を通じ,此奴の方は,こちらから.
       此の身は,下す,笞(むち)とも天の使ひともなり.では,後始末.
       いづれ咎(とが)めは,殺めた此の身に.では,おやすみを.
       [傍白]いや,心を鬼に,母を思はゞ.何たる幕開け,
       が,まだ,先が.今一言,申し上げたい.
50      ガート. 何をしたなら.
    ハムレ. いや,よい,斷じて,申し上げた事,守らずとも.
       脂太りの王の求めに,再び床入りし,頰を摘(つま)ませ,
       我が小栗鼠(こりす)よとでも名を呼ばせ,二つ三つ,
       酒臭いキスを受けるか,項(うなじ)を淫(みだ)らな,
       指に弄(もてあそ)ばれゝば,このハムレットの事の總(すべ)てを,
       明かさずには.つまり,眞(まこと)は,物狂ひでは無く,
       狂ふたとは僞(いつは)りと.いや,さう耳に入れてこそ.
       何しろ御妃.美しくも淑(しと)やかにして賢きお方が,
       この話,魔女の手下の蟇(ひき)蛙に,いや,蝙蝠(かうもり)とも,
       化け猫とも,隱す事など致しますまい.誰がまた,その樣な.
       まさか.もはや分別も,秘密もあらうか.鳥籠の,
       扉(とびら)を高屋根の上で開け,鳥を逃がした諺(ことわざ)の,
       あの猿を眞似,空を飛ぶには籠に潛(もぐ)れと,その揚げ句,
       轉(ころ)げて頸(くび)を,折らぬことだ.
    ガート. 案ずるな.言葉が吐息(といき)から生れ,
       吐息は命の證(あかし)であれ,命は要らぬ,
       お前の言葉が漏れるなら.
    ハムレ. イングランドへとの命(めい)は御存知で.
    ガート. あゝ,忘れてゐた.さう決つた筈.
55      ハムレ. 封が既に懸つた國書に,幼い頃の友が二人,
       いや,牙持つ毒蛇を友と呼ぶならだが,
       奴らは王の命を受け,露拂(つゆばら)ひとなり,
       この身を罠へと.やるがよい,それも見ものだ.
       城攻めの,火藥を操(あやつ)る男どもが,
       己が仕掛けで吹き飛ぶ樣(さま)も.どれ程の企みであれ,
       こちらは更にその下を掘り,奴らを月の世へ,
       吹き飛ばしてやる.おゝ,何と氣味良き.同じ企みが,
       一つ線の上で出食はす.此奴(こやつ)が爲に,事は俄(にはか)に.
       では,この肉詰めを隣の部屋へ.母上,おやすみを.
       さて,この大臣(おとゞ),今では何と,靜かで秘密を良く守る,
       由〻しき御仁に.生きてある時は,只の愚かなお喋り男が.
       それ,行かう.お前の始末を附けてやる.
       おやすみを,母上.               退る.


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