2016年12月5日月曜日

『ハムレット』第16場(4幕5場とも)について.その7

ハムレット Hamlet 飜譯本文:

『マクベス(下書き)』は,こちら
                              

『ハムレット』第16場(4幕5場とも)について.その7

 廷臣の話によればオフィーリアは,王國内に隠謀の動きがあると言ひ,ついては女王に知らせるための面會を求めてゐると言ふ.しかし既に正氣は失はれ,隱謀話の妄想に從つて振舞ふ樣(さま)がガートルードに報吿される.狂人の信ずる事に根據は無いが,斷片的に,たゞ隱謀があるとの『狀況』を固く信じ,それに隨(したが)ひ,氣を昂らせてゐると言へる.

 狂人には狂人の生きる『世界』があり,その振舞ひは,信ずる『世界』の中に於いては,他人(ひと)には譲れぬ理窟に基づかう.それだからこそ,女王に會へぬと聞かされゝば,怒りや苛立ちを露はにもする.

   狂人であるから仕方がないと今日の我〻は考がちだが,如何に宰相の娘とは言へ,自らが女王に進言を試みるなど,それ自體が異常な事である.有り得べきは,せめて父親のポローニアスを探し求めるといつた處が限度であらう.ところが事態は,さうした限度を既に超えてゐる.つまり,自らが進言しなくば事は收まらぬとの決然たる態度である.それほどの思ひとは,はたして何なのか.

 さて,オフィーリアは王宮に入るまでは『隱謀』話の妄想を抱いてゐたが,第一聲で女王を探し求めるものゝ,そこが狂人の狂人たる所以,『隱謀』に纏(まつは)る『世界』はまつたく消え去り,オフィーリアは突然に歌を唄ひ始める.

    歌などを唄ふべき場で無いことは明らかであるが,これはオフィーリアが,事の前後の脈絡も無く既に異なる『世界』に入り込み,オフィーリア自身にとつては,疑ふべくも無き新たな『場』が始まつた事を意味してゐる.

 從來の解釋もしくは上演では,すべて押し竝べて『狂女の振舞ひ』であると見て,たまたま歌を唄ふとし,オフィーリアは,たゞひたすらに狂ふといつた有樣となる.解釋と言はうより,字面どほりの場面であるとして演じられてゐるだけである.

 しかしながら仔細に見れば,さうした中にも,その場の登場人物たちに何事かを傳へようとする樣子が見て取れる.つまり此處でもオフィーリアは,狂人なりの確とした『世界』の中にあり,その『世界』の中で,己に相應しい何らかの『役割』を勤めてゐるのだ.人間の『心性』といふ點からは,狂人も正氣の人間も變りは無い.たゞその『世界』が,目の前の『現實』とは異なる事が,狂人の狂人たるところなのである.

   以上の事情を理解して戴いた上で,この場面を『理解』して行かう.

   では,第一聲の後オフィーリアは,はたしてどのやうな『世界』に己れがゐるものと思つてゐるのか.

 ところでオフィーリアの歌につき多くの方が,恐らくは若い男女の悲劇を描いた『ロミオとジュリエット』の物語に引き摺られてか,先入觀から,『ハムレットへの叶はぬ思ひ』なるものゝ痕跡を讀み取らうとする.その影響がまつたく無いとは言はないが,オフィーリアの狂氣には,己れを哀れとするやうな『正氣』を殘す餘地は無い.

事情は上に述べた通りである.
 

2016年4月7日木曜日

『ハムレット』第16場(4幕5場とも)について.その6

ハムレット Hamlet 飜譯本文:

『マクベス(下書き)』は,こちら
                              

『ハムレット』第16場(4幕5場とも)について.その6

さて,冒頭行き成り,狂つたオフィーリアの登場第一聲は,オフィーリアが父ポローニアスに成り切つてのもの…などゝ解説されても,俄には,この『新説』に信じがたい思ひを抱かれる方が殆どであらう.しかし,思ふに,さうした『驚き』こそ,シェイクスピアが『劇的效果』の面から狙つたものでもある.

と言ふのも,オフィーリア登場直前,その言動がをかしい事を,廷臣(Q2版.F1版ではホレイショー)の口から既に語らせてゐる.つまり作者は『種明かし』を進んで行つた.ならば,語りそのまゝにオフィーリアを登場させたのでは,さしたる驚きも,觀客は覺えない.これは今日の上演例を見ても明らかで,どれほど役者が聲を張り上げても,觀客の心に強い驚きを與へる事は無い.たゞ淡〻と,お定まりの『狂女』の場面を見せられるだけだ.

さうした『不首尾』を,シェイクスピア程の手練の作者が,するであらうか.が,しかし,實を言ふと,この場面を,僕は當初,これまでの解釋どほりに見て,オフィーリアの二度に及ぶ登場に退窟を覺え,シェイクスピアも芝居作りの基本を辨(わきま)へぬとはと,いさゝか呆れてゐた.「この程度か」と.今は己れの不明に呆れて,恥ぢ入るばかりである.シェイクスピアは,觀客の豫想を超えたオフィーリアの登場をもつて,應へてゐたのだ.ホレイショーによる『種明かし』は,充分に意圖された『仕掛け』なのである.まつたく見事な限りと言ふほか無い.


2016年4月5日火曜日

『ハムレット』第16場(4幕5場とも)について.その5

ハムレット Hamlet 飜譯本文:

『マクベス(下書き)』は,こちら
                              

『ハムレット』第16場(4幕5場とも)について.その5

だがしかし,このやうな『解釋』は,これまでの日本語譯で讀む,または,その上演を見る方〻にとつては,まつたく思ひもよらぬものであらう.なぜなら,逍遙を始め軒竝みに,どの飜譯者も,オフィーリアの一度目の登場の,すべての臺詞を『女言葉』に譯してしまつたからだ.これでは作者が,二度目に分けての登場とした意味は失はれ,後はたゞだらだらと,意味不詳な狂女の言葉の羅列と受け取る他は無い事となる.

これは『誤譯』の齎す典型的な混亂を示す例ではあるが,この場面に關しては,飜譯者たちだけの『誤ち』に止まらぬ問題がある.そもそも彼ら飜譯者たちが底本と仰いで用ゐた英國の校訂本に,オフィーリアが,己れを亡き父親のポローニアスと妄想し,現れるとの發想が,まつたく無い.その結果,誰も彼も,『場面の造り』を理解し損ねたまゝ,何とは無しに御定まりの『狂女』の場面として飜譯する事になつてしまつたからだ.つまり,シェイクスピア劇の『本場』とされる英國の校訂者たちも,さうした程度の讀み方しか出來てゐないのである.

ところで,この冒頭の臺詞には,面白い『仕掛け』がある.今一度原文を見て頂きたい.

 Where is the beautious Maiestie of Denmarke?

狂つたオフィーリアが,この臺詞と共に王宮に現れたと言ふことは,父親ポローニアスがガートルードを訪ふ折には,この物言ひを好んで用ゐてゐたといふ事である.このうちの,世辭を含んだ單語と言へば,まさに beautious である事は理解頂けよう.

そこで,思ひ出して頂きたいのが,第7場,ポローニアスがクローディアスとガートルードに,ハムレットがオフィーリアへ送つた戀文を讀み聞かせる件(くだり)である.この折ポローニアスは,ハムレットがオフィーリアを褒め上げる際に用ゐた,とある單語を,頻りに批判する.原文を引くと,

To the Celestiall and my soules Idoll, the most beau-
tified Ophelia, that's an ill phrase, a vile phrase,
beautified is a vile phrase,  (イタリック部分は手紙文)…となる.

つまりポローニアスは beautified の單語について,口を極めて文句をつけてゐる.ならば,しかし,どのやうな單語に替へるべきかとは述べてをらず,話題は,何とも,中途半端なまゝ,打ち切りとなる.觀客としては,半ば取殘された思ひを抱かされる場面と言へる.その答こそが,己れをポローニアスと妄想するオフィーリアの,第一聲に含まれた,ポローニアス氣に入りの單語, beautious といふ譯なのである.





2016年3月31日木曜日

『ハムレット』第16場(4幕5場とも)について.その4

ハムレット Hamlet 飜譯本文:

『マクベス(下書き)』は,こちら
                              

『ハムレット』第16場(4幕5場とも)について.その4

兎も角もである,ハムレットはオカルト物の芝居では無い.當時,狂人の目には,正氣の者では見ることの出來ぬ眞實が見えるものとの考へ方があつた事は,この後のレィアティーズの臺詞からも窺へるが,世の中には,さうした不思議なこともあるといふ程度の,斷片的な描き方に留まつてゐる.第一,オフィーリアの語るところは,目の前の現實とは,まつたく異なつてゐる事は明らかだ.この物語の主筋としては,そのことの方が遙かに重要である.

話を戾すと,それに,もしオフィーリアが『皮肉』を述べたのだとしたら,これを完璧な『狂氣』とは言ひ得無い.尠くとも何らかの『正氣』を殘してゐるといふことになる.完璧な『狂氣』となれば,今,目の前の出來事とは,まつたく別の世界の中に生きるのでなければ,救はれ得る餘地を殘してしまひ,觀客の心の中に,何故救ひの手を差し伸べる場面を作らぬのかとの疑念または願望の念を生じさせて仕舞ふ.さうした不首尾をシェイクスピアほどの作者がする筈も無い.

では,オフィーリアは今,どのやうな世界にゐるのか.冒頭の臺詞からして,既に己れが,どのやうな狀況の中にゐると思つてゐるのであらうか.ふたゝび引くと,この臺詞である.

Oph.  Where is the beautious Maiestie of Denmarke?

(さき)に僕は,この臺詞には,過度の『世辭』が含まれてゐると述べたのだが,如何であらうか.『皮肉』では有り得ぬとすると,その樣に思へぬか.しかしながら,である.如何に狂つた少女であるとて,あまりに過ぎた『世辭』ではないか.かうした『世辭』を,述べるオフィーリアの『必然』は,どこにあるのか.さう,皆さんは,思はれぬか.ご自身が『役者』となつたつもりで,御考へ願ひたい.いつたい全體,どんな氣持で,この臺詞を口に上せるのか.この明らさまな,『世辭』を述べ得る情念とは,と.


答は,この文の,冒頭に掲げたごとく,これを臆面も無く言ひ得る者は,オフィーリアの父,ポローニアスを措いては他に,まつたく有り得ない.と言ふ事は,果たして何を意味するか.オフィーリアは,父を失つての絶望から,『狂氣』の餘り,己れが父親ポローニアスの『不在』を埋めるといふ,何とも彼とも,哀れを窮む『妄想』に,取り憑かれたのだ.つまり,この場冒頭のオフィーリアは,ポローニアスとして,振舞ふのである.いやもう,何たる,シェイクスピアの『手法』であらうか.

2016年3月30日水曜日

twitter 『ハムレット』とは何か.より.



ハムレット Hamlet 飜譯本文:
Scene 1 Scene 2 Scene 3 Scene 4 Scene 5 
Scene 6 Scene 7 Scene 8 Scene 9 Scene 10 Scene 11 
Scene 12 Scene 13 Scene 14 Scene 15 Scene 16 Scene 17 Scene 18 
Scene 19 Scene 20

『マクベス(下書き)』は,こちら
                              

 さてまあ,寄り道の tweet に耽り,標題の Hamlet がご無沙汰で,些と此れからは本筋を,囀らう.

Hamlet なる御芝居は,實の處,極く常識に適ふ筋立てゞ出來てゐる.世に溢れ反る難解な解釋は,單に學者達の,『讀み落し』を發端とする.

では何を『讀み落し』たのか.

結論を言ふと,最終場での Gertrude とHamlet の遣取りの『意味』を讀み落としたのだ.

 Quee. The Queene carowses to thy fortune Hamlet.
 Ham.  Good Madam.

この臺詞は最終場,Gert.がHam.に向け杯を飲み干す折の遣り取りである.この際のGert.による祝福が,どれ程重要な意味を持つかを,學者たちは悉く,讀み落して來た.結果,デンマーク王國の女王であるGert.を,恰も單に輕率な女とのみ看做し,延いては芝居を誤解したのだ.

ところで,今こゝに言ふ『學者』とは,唯に日本の『學者』に限らない.Shakespeare(以降,字數節約の爲「沙翁」とする) 劇の『本場』と言はれる英國を始めとし,世界の評家が誤つたのだ.ならば彼等に學んだ日本の學者や飜譯家達が誤たぬ筈も無く,その上演も同樣の有樣である.

今日『ハムレット』は,かうした『環境』に置かれ,觀客に供されてゐる.この爲,『鑑賞』をする以前に,理解し難い物となつてをり,眞正の悲劇としては,殆んど何らの感興も,催させることは無い.たゞ人〻は,『沙翁の最高傑作』だの『名作』だのとの謳ひ文句に踊らされてゐる.情け無い事に.

だが然し,忘れてならぬ事がある.この作品は初演されたエリザベス朝時代以降大變な評判を呼び,繰返し上演された.もし今日の樣な『解釋』(…らしき代物なのだが,それは措き)で上演されてゐたとするなら,當時の觀客の鑑賞眼は,賴りにならぬ程度であつたと言はなければならぬ.果してさうか.

今「エリザベス朝時代以降…繰返し上演」と書いたが,この表現には大きな『問題』がある.實はまつたく上演されなかつた時期があるからだ.まつたくである.これは唯『ハムレット』だけに止まらず,何と沙翁のすべて戲曲が舞臺から,姿を消した.

いやそれどころか,舞臺そのものが英國から消えた.つまり沙翁の作に限らず,芝居といふものが英國の地から消えたのだ.1642年9月2日,娯樂を敵視した『敬虔』なる淸敎徒革命政府は英國のすべての劇場の閉鎖を命じ,演劇の上演を禁止,更には劇場建物も解體された.隆盛を誇つた所謂エリザベス朝演劇は,この時まさに『絶滅』したのである.

その後,革命政府は分裂分解し,1640年に『王政復古』の時代となる.それまでチャールズ2世と共に佛國に逃れてゐた劇作家達も歸國,芝居の禁止も解かれ劇場も新たに建てられ,再び盛んに芝居の上演される時代が訪れた.が,一度『絶滅』した『エリザベス朝演劇』が,かつての姿で復活する事はなかつた.

さう,まさに「…かつての姿で」は.つまり上演されはしたのだが,舞臺の樣子は 似ても似つかぬ『復活』であつた.と言ふのも當時,歸國した劇作家などの演劇人は,その頃佛國を初め大陸ヨーロッパで隆盛であつた上演形式を最上最新のものとして,その『枠組み』での舞臺作りをしたからである.

その典型が,今日までも大方の舞臺樣式の主流である『額縁舞臺』の導入だ.舞臺前面を proscenium arch と呼ばれる『額縁』で圍ひ,場面ごとに幕を下し情景を飾る.室内の場面なら壁で圍ひ家具を置き,屋外の場面では,遠景を背後に木〻を配する『寫實』を旨とした上演方法だ.

さうした『趣味』の導入が可能となつたのは,額縁舞臺芝居は精〻,數幕の場面轉換で濟んだからだ.ところがである,沙翁劇の場面數は,たとへば『ハムレット』も20場ある.これを一〻飾り直したのだから堪らない.舞臺裏は右往左往.その結果,到底上演には適さぬとの議論が持ち上がつたと言ふ.

揚げ句沙翁の作品は,かつて英國演劇が『未熟』であつた時代に作られた爲,樣〻な不都合が生じるのだ,いや,抑〻上演の爲の作などでは無く,臺詞の遣取りといふ形式を用ゐてはゐるが,觀客の爲にでは無く讀者の爲に書かれたものであつて,板に載せる意圖など元より無かつたといふ説まで現れる.

如何であらう,これを傳統の『絶滅』と言はずして,何と呼べば好いのであらうか.淸教徒革命による破壞を經て,彼等の手許に殘つてゐたのは,自らは物言はぬ,印刷物としてだけの芝居であつたのだ.つまり上演の實際は,殆んど何一つ,後世の英國に傳へられること無く,既に途絶えてゐたのである.

今ひとつ,さうした例を紹介して置かう.沙翁の作の多くが初演され,自身も役者として樣〻な舞臺を勤めた劇場 The Globe に關してだが,今日でこそ,それが圓形の建物であつた事を,多少とも沙翁の作の解説を讀まれた方なら承知であらうが,それすら『王政復古』後には,全く忘れ去られてゐた.(續く…)







2016年3月27日日曜日

蜷川『ハムレット』の頓珍漢

ハムレット Hamlet 飜譯本文:

『マクベス(下書き)』は,こちら
                              
下記リンクの「蜷川『ハムレット』」なるものを見て….


     いや,驚いた.何とこの先,ガートルードは最終場,毒入りだとは知らずだが,我が子ハムレットへ杯を掲げ,どうあつても『祝福』blessing を送らなければならぬと言ふのに,その『伏線』となる,缺くべからざる大事な臺詞が,綺麗さつぱりカットされてゐる.これでは話がどうにもかうにも繋がらぬ.觀客たちは,何が何やら,たまたま偶然ガートルードは,毒入りワインを飲んで死ぬとの,あれよあれよのドタバタ芝居を見せられる嵌めとならう.

     と,さう思ひ,その最終場(http://youtu.be/ZzUM5bAbpvQ)を見たところ,これはいけない,ガートルードは登場からして,あらうことか滿面に笑みを湛へてゐる.すべて解決濟みとの風情である.ガートルードは浮かれに浮かれ,單なる『事故』から,輕率なまゝこの世を去つて,死後の裁きの場へと向かふ.たまたま毒に中つたは御氣の毒ながら.これでは先夫ハムレット王の亡靈も,こんな女を妻としてゐたかと,その羞づかしさから,蒼褪めたその顔をさへ,赤らめたに違ひ無い.もはや喜劇の始末である…出來は惡いが.どうやら,最早救ひやうも無い.

     さて,カットされたハムレットの臺詞とは,以下の通りだ.(原文Q2版の綴りによる)

    Ham.              once more good night,
   And when you are desirous to be blest(= blessed),
      Ile (= I'll) blessing beg of you,

     この臺詞は,最終場に至るガートルードにとり,延いては主人公ハムレットにとつて,この場面中『最も重要』な,ハムレットから母親ガートルードへの『言ひ渡し』である.この後のガートルードに纏る場面を,この臺詞無くして理解することは不可能だ.つまりこゝでハムレットは,いまだ完璧な悔悛にまで至らぬ母親へ向け,親子の證(あかし)とも言ふべき,親からの神への願ひ,すなはち blessing を「あなたが心より悔い改めたいと願ふまでは,拒み通す」と宣言したのだ.その時までは親でも子でも無いと言ふ言葉なのである.

     芝居としては,この臺詞から,ガートルードの『心のうちの苦しみ』卽ち,第5場で,亡靈が『預言』した「己が良心の荊の棘に苛まさせよ」との,新たな筋立てが始まることになる.つまりである,ガートルード役者にとつては,これを起點に,役者としての見せ場が始まるのだ.この臺詞があればこそ,ガートルードは,千〻に心を亂した末に,ハムレットからの手紙によつて,クローディアスによるハムレット殺害の企みを知り,己の輕率な罪を深く悔い,その徴として杯を手に,ハムレットへの blessing『祝福』を行ふのである.つまり上記の臺詞が無いのなら,敢へてクローディアスの制止を退けてまで,杯を手にする必要も無い事となる.

     その最終場の遣り取りは,以下の通りだ.

    Quee.    The Queene carowses to thy fortune Hamlet.
    Ham.     Good Madam.

     こゝで注目して貰ひたいのは,ガートルードの宣言への,ハムレットの返答だ.Good Madam. である.これを坪内逍遙は「かたじけなうござるが……」と譯し,ある飜譯者は「ありがたく」あるいは單な儀禮的な挨拶として「母上」などゝ意味無く譯したが,いづれも臺詞の重みに關して,理解を缺いた譯である.

     明らかにこれは,單なる禮と言ふものでは無く,ガートルードからの悔悛の表明に向けた『承認』の意の言葉だからだ.となれば,當然,これに呼應する臺詞となれば,前(さき)に掲げた第11場のハムレットによるガートルードへの『言ひ渡し』を措いて他に無い.その『完結』をシェイクスピアは描いたのである.

     兎にも角にも主人公ハムレットにとり己が母親の悔悛は,第2場における所謂第一獨白以來,重く伸し掛かる問題であり,つまりハムレットの抱へた『問題』は,クローディアスを抹殺するだけでは,終りはしない.己が母親の,不貞に等しい『墮落』に終止符が打たれぬ限り,本來は快濶であるハムレットの『惱み』が收まることは無く,いはゆるハムレットの『復讎の遲れ』なるものも,そこにこそ原因がある.

     それがやうやく最終場に至り,解決を見るとの極めて大事な場面なのだ.こゝに於いてこそハムレットは,心置き無く,クローディアスへの復讎に向かふ事が出來る.たゞし,杯にはクローディアスにより毒が盛られて,悔悛の意を傳へる爲の杯が,死への杯となるのである.まつたく皮肉な事ではあるが,世には,かくなる悲劇が起こり得る.デズデモーナやコーディーリアへも,苛酷な運命が訪れたやうに.

     さて,このDVD版の飜譯では,ハムレットは,僅かに「母上」とだけ言ひ,何ら氣にも止める風無く,頻りに劍の選定をのみするばかりだ.これでは,まつたく,芝居の筋が見失はれたまゝ,たゞ淡〻と無機質に,と言ふより頓珍漢なまゝに,事が進行するのみとなる.これを『悲劇』とは,どれほど世辭を心がけても,言ひ樣が無い.

     かうした事が起きるのも,件(くだん)の臺詞を輕率に,カットなどした當然の結果であるが,そもそも氣輕に削るとは,演出の蜷川氏が,まつたく『ハムレット』を理解してはをられぬからであり,また飜譯者氏も,カットにクレームを附けてはゐまいから,一體全體,何の爲に飜譯,上演に及んだか,不思議千萬と言ふほかは無い.

     たゞ,まあ,かうした『無理解・誤解』の『頓珍漢』は,日本に限つたことでは無い.いや,それどころか,カット無しの完全版だの『本場物』などゝ,したり顔の,今や英國男爵(Sir.)にまで上り詰めた Kenneth Branagh による『ハムレット』でさへ,カットはせずとも似たもので,ガートルードは最終場,同じく浮き浮き御登場となる.

     そして當然,ガートルードによる『祝福』場面も,息子の勝ちに浮かれた餘りの振舞ひで,以下の経緯は『事故』扱ひの有樣だ.つまり,そもそも,今囘カットされてゐる臺詞の持つ意味合を,彼らもまつたく理解してゐないのだ.シェイクスピア劇の『本場・傳統』を氣取らう英國すら,この始末である.日本の演出家の頓珍漢のみ,責める譯にも行かぬ『慘狀』こそ,今日の『ハムレット』をめぐる現實なのである.

     もつとも,英國に,無闇,無邪氣に『シェイクスピア劇の傳統』を求めることには,無理がある.歌舞伎の樣な聯綿たる傳統は,實のところ英國には,まつたく無いからだ.あるのは精〻1660年の王政復古以降のもので,その前代の1640年頃よりの淸敎徒革命政府が,ありとあらゆる芝居・娯樂を禁止して,根こそぎ劇場も壞しつくし,英國の地ではシェイクスピア劇のみならず,あらゆる芝居・舞臺の傳統は,その時『絶滅』させられたからだ.殘つたものは,印刷物のみ.すなはち上演の實際は,まつたく受け繼がれてなどゐ無いのである.

     今日あるのは,したがつて,王政復古以降の硏究家による,僅かに殘された文獻のみから推測に推測を重ねての,大變な苦勞と努力の末の結果であつて,たとへば今では『シェイクスピアの劇場』と言へば,半野外の圓形建物であつたことが知られてゐるが,淸敎徒革命による『絶滅』を挾み,さうしたことすら,まるで忘れられてゐたと言ふ.

     つまり全ては『絶滅』の後の,硏究家による『發見』の賜物で,『考古學的成果』に過ぎない.これを眞正の『傳統』だとは,なんとも言ひかねる.

     こんな譯で,『ハムレット』といふ御芝居も,エリザベス朝やジャコビアン時代,いつたいどのやうに上演されてゐたものか,手懸りと言へるほどのものは,まつたく無い.これが今日の,譯の解らぬ『ハムレット』を『粗製亂造』させた原因である.是非とも日本の觀客には,かうした『オレオレ詐欺』に乘せられぬよう,心より,願ふ次第である.

     さて,最後に,役者諸氏へ.今日の世は,かうした『頓珍漢』の,極みと言ふべき記録が手輕に,しかも殆んど『半永久的』に殘る事となる.ついては是非とも愼重に,演出家を選ばれるよう.…老婆心ならぬ『老爺心』にて,失禮ながら.                                    

2014年6月28日土曜日

『ハムレット』とは何か.




ハムレット Hamlet 飜譯本文:
Scene 1 Scene 2 Scene 3 Scene 4 Scene 5 
Scene 6 Scene 7 Scene 8 Scene 9 Scene 10 Scene 11 
Scene 12 Scene 13 Scene 14 Scene 15 Scene 16 Scene 17 Scene 18 
Scene 19 Scene 20

『マクベス(下書き)』は,こちら
                              

『ハムレット』とは何か. (1)

以下は,twitter の文章を綴り併せたもので,
取留めの無きところは,今後折〻に修正加筆する.


『ハムレット』に關しては,實に樣〻なことが言はれ語られ傳へられるが,決定版と言つて良いものに出會つたことがない.あるのは,斷片的に,登場人物に割り振られた臺詞(せりふ)に感心する類ひの他は,『哲學的な,餘りに哲學的な』とでも言ふ他無いものばかりだ.或は核心を語らうとしない.邊りを迂路つくばかりの有樣だ.

昭和期の英文學者福原麟太郎は『シェイクスピア講演』の中で,自分は,ハムレットが母親ガートルードを詰る場(俗に第3幕第4場)が終ると興味が無くなり,殆どの場合そこで退席すると述べてゐる.それでゐて,この作を,失敗だとも駄作だとも言はぬ.妙なことである.

福原の退席は,彼が以降の展開を誤解してゐたからであらう.上演側も誤解に基づく芝居作りをしてゐた筈で,兩者とも芝居の後半は,たゞドタバタと人が死ぬ『無機的な』展開あるのみと考へてゐたからに他なるまい.つまり芝居を通じてのテーマが把握されてゐないのだ.

ともかくも,「ハムレット本人は興味深いが,筋書きは『添へ物』」と見るのが,大方の感想であらう.つまり作者は芝居そのものより,主人公ハムレットといふ『人物像』を描きたかつたとの見方である.ハムレットの『憂鬱』だの『英雄指向』だのと語られる所以である.

ハムレットと『憂鬱』は常に對で語られるが,生來彼が『憂鬱症』を患つてゐた譯ではない.原因は明らかだ.母親の,餘りに早過ぎる『再婚』である.しかも相手は豫〻餘りに受入れ難く思つてゐた父王の弟,叔父のクローディアス.こんな事態は誰にとつても許せまい.

更にこの再婚はキリスト教の戒めに反する.
  レビ記 20:21 人もしその兄弟の妻を取とらば是汚はしき事なり 彼その兄弟の
        陰所を 露はしたるなれば その二人は子なかるべし 
つまり神に祝福されざる結婚である.これに目を瞑るデンマークは,汚れの極にある.ならば『憂鬱』も取り憑かう.殊更ハムレットに限つた事ではない.つまり,その程度のことなのだ.

「デンマークは,汚れの極」…これが主人公ハムレットの開幕當初の『認識』だ.であれば彼は,その事態にどう立向ひ,その試みは如何にして成し遂げられたか或は否かをリポートすることが,劇作家の役目である.つまり芝居は,この筋立てを『核』とする他はない.

ところが,この點の認識が極めて曖昧な評論に溢れてゐるのが,戯曲『ハムレット』を取卷く今日の現狀だ.

主人公が命を賭して,穢(けが)れたものを淨化する,さうであるなら『ハムレット』も,決して不可解な『問題劇』などではなく,その點からすれば『有觸れた芝居』となる.有觸れたとは,それ自體,褒め言葉では,當然,ないが,芝居の枠組とは,さうしたものだ.その枠組が有觸れてゐればこそ,芝居の中身を鑑賞しうるのだ.

しかしながら,『ハムレット』に關しては,さうした視點からの解釋が,殆ど失はれてゐる.どれもこれも,『ハムレット』の特殊性を強調するものばかりに見える.それゆゑ『問題劇』なのだらうが,しかしこの芝居は,初演當初より,大變な評判をとり,人氣を博したと言ふ.はたして『問題劇』などゝ言ふ曖昧な代物を,エリザベス朝といふかジャコビアンたちが,賞讚したとは考へられぬ.何かきつと,今日の我〻の側に『見落し』があるのではないか.それは,何か.

僕の飜譯は,概ね以上のやうな『假説』から始まつた.




2013年10月19日土曜日

『ハムレット』第16場(4幕5場とも)について.その3

ハムレット Hamlet 飜譯版:
Scene 1 Scene 2 Scene 3 Scene 4 Scene 5 
Scene 6 Scene 7 Scene 8 Scene 9 Scene 10 Scene 11 
Scene 12 Scene 13 Scene 14 Scene 15 Scene 16 Scene 17 Scene 18 
Scene 19 Scene 20

『マクベス Macbeth(下書き)』は,こちら
                                      

『ハムレット』第16場(4幕5場とも)について.その3

さて,その他には,これを一種の『皮肉』と捉へる見方がある.「かつての(心身ともに)美しかつた女王は,もはやゐなくなつた,何處にゐるのか」との含みでは,と言ふのだ.

たしかに物語の流れからすると,觀客にとつて,理解出來ぬ『皮肉』ではない.しかし,それを強調することは,をかしな見方だ.觀客がどう受け取らうとも自由であるが,オフィーリアが『皮肉』を述べる必然性が無い.

つまり尠くとも,オフィーリアは狂ふ以前,實は女王が,穢れた女性であるとの認識を持つてゐたとしなければならぬ事となり,それは,この場までの展開からすると,あり得ぬ事だ.また,なにも觀客の立場からの見方に,登場人物が與(くみ)して,舞臺を拔け出す事は無い.あくまで,芝居の中の人物なのだから.

もちろん,かうした,圖らずも生まれる『皮肉』な局面を,ハムレットに限らず,シェイクスピアは『多用』してゐる.しかしそれは,偶然の齎すものとの範圍においてゞあつて,この場面で言へば,オフィーリアが『神』の如く,總てを見通す者として登場するなどはあり得ぬ事だ.

それにしても,何故かう芝居を,何事か『哲學的』なメッセイジを傳達する爲の『手段』のやうに考へるのか,まことに不可解と言ふ他は無い.


2013年9月16日月曜日

ソネット Sonnet 18 別試譯



ハムレット Hamlet  飜譯本文:
Scene 1 Scene 2 Scene 3 Scene 4 Scene 5 
Scene 6 Scene 7 Scene 8 Scene 9 Scene 10 Scene 11 
Scene 12 Scene 13 Scene 14 Scene 15 Scene 16 Scene 17 Scene 18 
Scene 19 Scene 20

『マクベス Macbeth(下書き)』は,こちら

                               


                              sonnet 18

       ひとつおまへを季節に擬(なぞら)へ,夏だとしようか.
       おまへがこそは,なほ麗しく,もの穩やかだ.
       がさつな風ども,結び初めし,花の蕾をいたぶるし,
       夏などほんの,腰掛けほどの短さと來る.
       時には膚(はだ)を,燒くかに天の,目の玉照りつけ,
       と,よくその,黄金(こがね)に輝く顔(かんばせ),雲へと隱れ,
       竝(な)べての見事なるものも,やがては,衰へる,
       思はぬ出來事,移ろふ自然に,手も入れられず.
       されどおまへの,永久(とは)なる夏は,翳(かげ)ることなく,
       今あるおまへの,その美しさも,失はれはせず,
       死神なぞに我が蔭の,下(もと)に入れりと,嘯(うそぶ)かせはせぬ.
       今や永久なる,この詩のなかに,生き行かうからは.
         この世に人が,息をし續け,もの見る限り,
         詩は生き續け,おまへに命を與へ續けよう.


              "Shall I compare thee to a summer's day?"

         Shall I compare thee to a Summers day?
         Thou art more louely and more temperate:
         Rough windes do shake the darling buds of Maie,
         And Sommers lease hath all too short a date:
         Sometime too hot the eye of heaven shines,
         And often is his gold complexion dimm'd,
         And euery faire from faire some-time declines,
         By chance, or natures changing course vutrim'd:
         But thy eternal Sommer shall not fade,
         Nor loose possession of that faire thou ow'st,
         Nor shall death brag thou wandr'st in his shade,
         When in eternal lines to time thou grow'st,
             So long as men can breath or eyes can see,
             So long liues this, and this giues life to thee,

2013年9月12日木曜日

ソネット Sonnet 18 試譯



『ハムレット Hamlet』飜譯本文:
Scene 1 Scene 2 Scene 3 Scene 4 Scene 5 
Scene 6 Scene 7 Scene 8 Scene 9 Scene 10 Scene 11 
Scene 12 Scene 13 Scene 14 Scene 15 Scene 16 Scene 17 Scene 18 
Scene 19 Scene 20

『マクベス Macbeth(下書き)』は,こちら

                               

                            sonnet 18

       ひとつおまへを,夏に擬(なぞら)へてみせようか.
       おまへがこそは,より麗しく,愼(つつし)みも深い.
       大風どもは,幼氣(いたいけ)な,蕾のうちの薔薇を襲ふし,
       夏の季節など,腰掛けほどの呆氣(あつけ)なさ.
       時にはギラギラ,天の目の玉,地を睨み附け,
       と,その,黄金(こがね)の顔(かんばせ)も,しばしば雲隱れ,
       世の美しきもの,ことごとく,やがては衰へる.
       不意の出來事,自然の齎(もたら)す變化に耐へ得ず.
       されど,おまへの永久(とは)なる夏は,翳(かげ)ることなく,
       今あるおまへの,その美しさも,失はれはせず,
       死神なんぞに,我が蔭の,下(もと)に入れりと嘯(うそぶ)かせはせぬ.
       今や永久なる,この詩のなかに,生き行かうからは.
         この世に人が,息をし續け,目にしうる限り,
         詩は生き續け,おまへに命を與へ續けよう.



            "Shall I compare thee to a summer's day?"

       Shall I compare thee to a Summers day?
       Thou art more louely and more temperate:
       Rough windes do shake the darling buds of Maie,
       And Sommers lease hath all too short a date:
       Sometime too hot the eye of heaven shines,
       And often is his gold complexion dimm'd,
       And euery faire from faire some-time declines,
       By chance, or natures changing course vutrim'd:
       But thy eternal Sommer shall not fade,
       Nor loose possession of that faire thou ow'st,
       Nor shall death brag thou wandr'st in his shade,
       When in eternal lines to time thou grow'st,
           So long as men can breath or eyes can see,
           So long liues this, and this giues life to thee,

2012年12月2日日曜日

Shakespeare の臺詞は,どう『詠まれる』べきか.(5)

『ハムレット Hamlet』飜譯本文:
Scene 1 Scene 2 Scene 3 Scene 4 Scene 5 
Scene 6 Scene 7 Scene 8 Scene 9 Scene 10 Scene 11 
Scene 12 Scene 13 Scene 14 Scene 15 Scene 16 Scene 17 Scene 18 
Scene 19 Scene 20

『マクベス Macbeth(下書き)』は,こちら
                                      

Shakespeare の臺詞は,どう『詠まれる』べきか.(5)

雜感:『間』といふものについて.

取留めの無いものと,多くの方に思はれてゐる『間』といふものにつき,
思ふ事など….

『間』は單獨では存在し得ない.

日本の短歌および俳句については,『1小節八拍』の流れの中で生まれるもの.

このリズムを外したのでは,單なる『無音』としか思はれぬ事となる.といふより『不快な』もしくは『頓狂な』無音狀態と言ふべきものとなる.『無音』と『有音』の狀態に一貫するものこそ『一小節八拍』のリズムなのだ.

『間』は「何も無い無音狀態ではない」との意味合ひの口傳が成立するのも,その前提として,『一小節八拍』のリズムが意識されてゐるからである.つまり,一小節といふ『全體』が『豫定』されずに,『間』だけが存在し得る事などは無い.

『間』は,『有音』または『所作』と對極にあるが,『一小節』を構成する要素といふ意味では,『有音』や『所作』と對等なものである.

無音は,次の『有音』により,『間』として認識される.または,作品そのものゝ『終了』により,『間』といふ有意な何ものかになる.つまり,繰り返しになるが,『有音』部と『無音』もしくは『所作無し』とにより,『有意の1ユニット』,つまりは『八拍』を形成する.

逆から述べれば,何事か『有意』の事柄を相手に傳へようと意圖する時,我〻の『念頭』には,『一小節八拍』の1ユニットが思ひ浮かび,有音の言葉は,その中で,言葉としての『生理』から,5乃至7音で役割を終え,おのづと『間』を生じさせることゝなる.

つまり,短歌・俳句を詠むものは,心の裡(うち)に,常に『八拍一小節』を『期待』してゐる.さなくば『間』といふものは存在し得ないと言つて良い.

何事かを傳へんとする情緖・情動が,1ユニットを構成する.或は我〻を『強制』する.

『有音』の言葉には,言葉そのものゝ持つ『論理』が働く.


…と,まあ,かうした『事情』が,Shakespeare の原文にも,あるか否か.この論の眼目は,そこにあるのだが,いまだ『本題』に到達致しませず,今暫くの御辛抱をと,願ふ次第にて…….

2012年11月8日木曜日

マクベス(下書き)001

ハムレット Hamlet 飜譯本文:
                                      

このページは,
blog 形式ではありますが,
ほゞ,日〻更新豫定です.
御承知置きのほどを…

THE TRAGEDIE OF
MACBETH

マクベスの悲劇(下書き)


なほ,譯文中の『句點』については,臺詞として,
登場人物の意識の『流れ』を優先するために,
文法上の句の切れ目や語の繫がりとは,異なる場所に施したものが,
(すくな)からず,ある.
和歌,俳句,短歌の詠みをに繋がるものと承知置き願ふ.

なほ,譯者の理想は,芭蕉の次の言に盡きようか.
『謂ひ應せて 何かある』(去來抄)

Scene 1(1-1)
雷鳴と稲光.其處へ三人の魔女.
1     1. いつ,次ぎ三人で,また逢ふね.
      雷,稻妻,それとも雨降りに.
       2. 今のあの,擦(す)つた揉(も)んだで,
      戰(いくさ)が負けだの勝つだのしたらさ.
       . なら,日の入り前だ.
     . 何處で.
5      2. あの野つ原で.
       . そこで,ばつたり,マクベスに.     [ 猫の鳴き聲す]
       . 今行く,ねずドラや. [ 蟇蛙の鳴き聲す]
      皆〻.   (ひき)が呼んで.あいよ.
      見目好し,穢(けが)れ.穢れ,見目好し.
      ゆらゆら,霧と,よどんだ風に乘り.       退場.


Scene 2(1-2)
喇叭,奧にて.そこへ國王,マルコム,ドヌルベイン,
レノックス,侍者を引連れ,出る.

と,血塗れの將校と出會ふ.
1    國王. はて,血塗(まみ)れの,あの者は.きつと知らう,
      傷口も生〻しい.謀叛人(むほんにん)どもの,
      今の樣子を.
     マルコ. あの將校です.まこと見事な働きで,
      こちらは虜(とりこ)を免(まぬか)れた.おゝ,勇ましき友.
      さあ,國王に,戰(いくさ)の行方(ゆくへ)を,
      いま目にして來た.
      將校. どちらがとも,まだ.
      まるで泳ぎに,疲れ果てた敵(かたき)同士が,
      なほも互ひを,組み敷(し)かむといふ.
      あの,殘忍を窮(きは)む,マクドンウォルド,
      (まさにも逆賊.募(つの)る逆意は蜂どもの,
      群がる如く)
      西の島〻より,步兵と騎馬の軍勢を得て,
      恰(あたか)も運命の女神めは,
      忌(い)むべき裏切りに笑(ゑ)みを送る,
      謀叛の輩(やから)の色女かと.が,いづれ徒花(あだばな)
      勇猛の士たる,マクベス殿,
      その名に恥ぢず,女神を尻目に,これ見よと,
      手にする劔(つるぎ)を血糊に曇らせ,
      まさに武勇の,神の申し兒,
      道切り開きて,彼奴(あやつ)に眞(ま)向ひ,
      出遇(であ)ひの握手も,別れの言葉もあらばこそ,
      相手を臍(へそ)から,顎(あご)の下まで切割(きりさ)いて,
      更には首を,我が方の,城壁の上に.
     國王. おゝ,一族の誇り.まこと,武人(ものゝふ)
5      將校. と,太陽が,步みを轉(てん)ずる季節には,
      船覆(くつがへ)す時化(しけ),地には雷(いかづち)
      まさに春の泉より,安らぎの湧くと見ゆるや,
      禍事(まがごと)も頭を擡(もた)ぐ.
      お聽きを,スコットランド王,是非に.
      今や正義は,武勇をもつて,敵の步兵を打破り,
      奴らはひたすら逃げる去るところ,
      ひとり,ノールウェイよりの武將,
      機を窺(うかゞ)ひて,武器を硏(と)ぎ立て,
      新手(あらて)の兵を得,新たなる攻めを.
     國王. たぢろぎは,これに,
      我が方の將,マクベスとバンコーは.
     將校. 如何にも,雀どもに大鷲が,
      または,野兎に獅子が,との程なら.(原文は,主語と目的語が逆.)
      まつたくに,この二方(ふたかた)こそ,彈藥を,
      二重(ふたへ)に籠(こ)めた大砲さながら, 
      二重二方,四層倍の,反擊を敵に.
      その姿たる,湯浴(ゆあ)みを敵の血飛沫(しぶき)で,
      または,ふたゝびゴルゴタの,
      髑髏(どくろ)の丘を,築かう爲であるとしか.
      が,氣も幽(かす)かに.傷口どもが,助けを叫んで.
     國王. (よ)くぞの報せ,その傷と言ひ,
      いづれも譽(ほま)れと見た.それ,直ぐ,醫者たちに.
そこへ,ロスとアンガス.
      誰か,あれは.
  マルコ. 御方(みかた),領主のロス.
10    レノ. 何と,急(せ)くやうな,あの目色.
      面(おも)差しからは,變事の報せかと.
   ロス. 王に榮(は)えあれ.
     國王. 何處より,參られた.
     ロス. ファイフの地より.あのまさに,
      ノールウェイの旗ども空に驕(おご)りはためき,
      渡る風,民を寒からしむ.
      そのノールウェイ王,大軍を率(ひき)ゐ,
      後ろ詰めには,不忠極まる謀叛人,コードーの領主,
      我が方へ向け,もの凄まじき攻めを.
      されど,戰(いくさ)の女神ベローナの,花婿マクベス,
      鎧(よろひ)を纏(まと)ひ,持てる力を存分に,
      一足も引かず,受ければ返し,斬り結び,
      王の驕(おご)れる心を挫(くじ)き,
      終(つひ)には勝利を,我が方へ.
     國王. 嬉しき限りか. 
15  ロス. かくて,ノールウェイ王スウェーノウは,
      和議をと請(こ)うて.いえ,許すなど,
      斃(たふ)れた兵どもの埋葬すらも.
      事を償(つぐな)ひ,セント・コームの島に於いて,
      一萬ダラーを,納め寄越します迄は.
    國王. もはや,コードーの領主めには,
      人の心を裏切れぬやう,直ちに死罪を申し渡せ.
      そして,彼奴(あやつ)が,嘗(かつ)ての稱號は,
      マクベスへと.
    ロス. 仰せ,慥(たし)かに.
    國王. 奴の失ふ,總てが榮(は)えある,マクベスの手に. 
                               退場. 
Scene 3(1-3)
雷.そこへ,三人の魔女
1     1. 何處にお出(い)でた,お前さん.
     2. 豚を取ッ殺しに.(狂牛病同樣の「狂『豚』病」の意.)
       3. (ねえ)さんは.
     . 船乘りの女房めが,栗の實(み)を前埀れに,
      もぐり,もぐもぐ,もんぐりと.
      お呉れ,てえと,失せろ,魔女めと,
      惡食(あくじき)(ぶと)りめ,大聲(おほごゑ)で.
      あれの亭主は,トルコのアレッポに.
      タイガー號の船長よ.
      なに,篩(ふるひ)の舟なら,一走り.
      尻尾無しの,鼠と決め込み,
      ぎりゝ,ぎりぎり,苛(いぢ)め拔いてやる.
5    2. 篩に,ひとつ,追ひ風を.
     . 優しいねえ.
       3. あたしも,ひとつ.
     . この手の中(うち)には,他のは總(すべ)て.
      港へ向ひ,吹く風は,
      東西南北,ことごとく,
      羅針盤にあらう限りは,みな.
      反吐(へど)で軀(からだ)を干涸(ひから)びさせて,
      眠りなんぞは,夜でも晝(ひる)でも,
      目蓋(まぶた)を降す遑(いとま)無し.
      もう,これからは,呪はれ男.
      つらい七夜(なゝや)が,九(く)の九層倍,
      瘦せて細つて,擦(す)り切れろ.
      船を沈めは出來ぬとも,
      きつと嵐の,海の木の葉に.
      御覽な,これを.
     2. どれさ,どれ.
10        . それ,とある舵取り男の親指さ,
      船は沈没,國への戾り掛けに.
                    ドラムの音
       3. あの音,ドラムの.マクベスめが,來る.
      皆〻.   定めを操る,三人(みたり)のはらから,
      手を携へて,早驅(はやが)けに,
      海でも陸(をか)でも,一走り.
      それ,今,ぐるり,ぐるぐると.
      三たびはそちら,三たび,こちらも,
      次の三たびで,締めて,九つ.
      そうれ,禱(いの)りは仕上つた.
         そこへマクベスとバンコー.
  マクベス. かうも荒(すさ)むは,晴れるはの日など,
      初めてのこと.
  バンコー. 後どれ程と,ソリスへは.何だ,あれは,
      ひねこび,獸(けもの)めいた形(なり)
      まさか,この世のものだとは,が,まさに.( not と on't の韻 )
      生きてか,いゝや,人の言葉は通じてか.
      解るのだな.三人(みたり)(そろ)つて,
      皹(ひゞ)割れ指を,薄つぺたな唇へと.
      御前らが女とは,が,その顎鬚(あごひげ)からすると,
      さうだとは.
15      マク. 口を,まづ利け.何やつだ.
     . よくこそ,マクベス,榮(は)えある御領主,グラーミスの.
     2. よくこそ,マクベス,榮えある御領主,コードーの.
     3. よくこそ,マクベス,必ずや王に,ほどもなく.
    バン. はて,なぜさう驚く,まるで怯(おび)えたかに,
      どれも大いに目出度からうに.まつたくに,
      お前らは,眼のまやかしか,または,まさに,
      見えたがまゝか.我が儕(ともがら)は,お前らに,
      今の位と,なほ譽れある身とも,さらには,
      王にもとまで吿げられて,言葉も無き樣に.
      この身には,何も.
      先行き芽吹く,時の種を知らうなら,
      さあ,どの粒が伸び,または,伸びぬか,
      話してみよ.構はぬ,媚(こ)びも怖れもせぬ,
      お前たちに,好まれようと,憎まれうと.
     . ようこそ.
     2. ようこそ.
     3. ようこそ.
     . 劣る,マクベスに,が,更にも勝(まさ)る.
     2. さほどの幸(さち)無し,が,更なる幸あり.
     3. 末ずゑは王家,己(おのれ)は虛(むな)しくも.
      では,よくこそ,マクベス,また,バンコー.
     . バンコー,マクベス,よくこそに.
    マク. 待て.また,筋の通らぬことを言ふ.譯を言へ.
      父サイネルが戰(いくさ)に斃(たふ)れ,
      なるほど今は,グラーミスの領主.
      が,コードーのとは.
      コードーの,領主は存命,勢ひも盛ん.
      まして,王にとは,まるで思ひも寄らぬこと.
      事コードーの,どころでは.
      いづこにて,その,妙な話を聞き附けた.
      また,何故,こんな荒れ野に待ち受けて,
      預言めいた言葉で,出迎へを.
      言へ,是非は無し.
                     魔女ら,消える.
    バン.土にも泡(あぶく)がゝ,水面(みなも)よろしく,
      まさにも,あれは.どこへと消えた.
    マク. 大氣の中へ.現(うつゝ)のものと見えたが,溶けた,
      吐息(といき)が風に消ゆるかに.
      せめて,今すこし.     
    バン.これは夢では,その,今の,あれこれは.
      食べでもしたか,虛(うつ)け草の根を,
      理性を虜(とりこ)にすると言ふ.
    マク. お子たちは,末ずゑ王にと.
    バン. そちらは,王にと.
    マク. 領主,コードーのとも,違つては.
    バン. いかにも,さうしたもの言ひを.誰だな.
          そこへ,ロスとアンガス.
    ロス. 王には,お悦びなるぞ,マクベス,
      この度の手柄の報せ.御讀みになるや,
      そなた自(みづか)ら擊つて出た,謀叛の地での働きに,
      お驚きと御褒め讚(たゝ)へとが,ともに込上げ,
      あたかも我が事の如く,思ひに耽(ふけ)られ,
      さらに讀み進まれるや,その同じき日に,
      またも,倔強(くつきやう),ノールウェイ兵どもとの鬪(たゝか)ひ.
      なに怖れ氣(げ)も,築く屍(しかばね)の山へも見せで.
      かくて,霰(あられ)の降るやに,相繼(つ)ぐ報せの,
      その何(いづ)れもが齎(もたら)すは,そなたの勳(いさをし)
      この大いなる,王土を護る戰(いくさ)にての.
      まこと,王の御前に,積もるが如くに.
    アン. ついては,そなたを王國の,主自ら勞(ねぎら)ふべく,
      直ちにも,目通りの地へと出迎へよとの事,
      褒賞は追つて.
    ロス. なほ,大いなる譽れの徵(しるし)に,
      王にはそなたを,コードーの領主と呼ぶべしと.
      では,あらためて,まこと榮えある領主殿,
      今や,そなたがこそ.
    バン. 何とまた,惡魔が眞(まこと)をとは.
    マク. コードーの,領主は存命.
      何故また,さうした,借着を着せ掛ける.
    アン. 領主たりし者なら生きても.
      が,今や重き,咎めの下(もと)にある命,
      己(おの)が所業で,失はうまで.
      はたして,ノールウェイ方に通じたか,
      謀叛の族(やから)に密(ひそ)かに與(くみ)し,利を得たか,
      または何(いづ)れもで,國の覆(くつがへ)しを謀(はか)つたか,
      そこは知らぬ,が,大逆の罪,自白も證據もあり,
      すでに位は引剥がされて.
    マク. [傍白]グラーミス,そして,コードー.
      その更にもが,まだ.[ロス.とアン.に]お役目に禮を.
      [バン.に]思はぬか,お子たちを,王にとは,
      あの,コードーの領主を齎(もたら)して呉れた者らが,
      まさにも言つたでは.
    バン. (ま)になぞ受ければ,更には王の冠をとまで,
      コードーの領主どころか.が,妙な事,
      いや,よくあるが.人を陷(おとしい)れようと,
      闇の世界の手先どもが,眞實(しんじつ)を口にして,
      目先の誠意で關心を買ふ,大事の場面で,
      裏切らうがため.[ロス.とアン.に]さう,一言,お二人へ.
    マク. 二つもが眞實に.目出度き口開け,大芝居へ向け,
      狙ふは玉座の.[ロス.とアン.に]まづは禮を,二方に.
      この目眩(くるめ)き誘(いざな)ひの,先は不吉とも良きものだとも.
      不吉なら,何ゆゑ手附けに,かくもの眞實を.
      今や領主,コードーの.良きものなら,何を今更,
      誘(さそ)ひにたぢろぎ,悍(おぞ)ましからう有樣に,
      髪は逆立ち,胸に收まる心臟の,鼓動は肋骨(あばら)の骨を打つ,
      事は未(ま)だだに.この世の恐怖も,目に浮び來る,
      この恐ろしさの比では無い.想ひ描いた殺人は,
      今まだたゞの幻だのに,この身を搖さぶり,
      想ひが全てを包み込む.が,何一つ,今目の前には,
      ありもせぬに.
    バン. それ,我が同輩の驚く樣は.
    マク. 運が王にするとなら,なぜ今,冠(かむり)を差出さぬ,
      何もせずとも.
    バン. 新たな譽れは,初めての衣,すぐは馴染まぬ,
     馴れよう迄は.
    マク. 構はうものか,
     時と時計は止まりなど,大嵐にさへ.
    バン. はて,マクベス殿,


Macb. Come what come may,
Time, and the Houre, runs through the roughest Day.
Banq. Worthy Macbeth, wee stay vpon your ley-
sure.
Macb. Two Truths are told,
As happy Prologues to the swelling Act
Of the Imperiall Theame. I thanke you Gentlemen:
This supernaturall solliciting
Cannot be ill; cannot be good.
If ill? why hath it giuen me earnest of successe,
Commencing in a Truth? I am Thane of Cawdor.
If good? why doe I yeeld to that suggestion,
Whose horrid Image doth vnfixe my Heire,
And make my seated Heart knock at my Ribbes,
Against the vse of Nature? Present Feares
Are lesse then horrible Imaginings:
My Thought, whose Murther yet is but fantasticall,
Shakes so my single state of Man,
That Function is smother'd in surmise,
And nothing is, but what is not.
Banq. Looke how our Partner's rapt.
Macb. If Chance will haue me King,
Why Chance may Crowne me,
Without my stirre.
Banq. New Honors come vpon him
Like our strange Garments, cleaue not to their mould,
But with the aid of vse.
Macb. Come what come may,
Time, and the Houre, runs through the roughest Day.
Banq. Worthy Macbeth, wee stay vpon your ley-
sure.
Macb. Giue me your fauour:
My dull Braine was wrought with things forgotten.
Kinde Gentlemen, your paines are registred,
Where euery day I turne t

Banq. What, can the Deuill speake true?
Macb. The Thane of Cawdor liues:
Why doe you dresse me in borrowed Robes?
But Treasons Capitall, confess'd, and prou'd,
Haue ouerthrowne him.
Macb. Glamys, and Thane of Cawdor:
The greatest is behinde. Thankes for your paines.
Doe you not hope your Children shall be Kings,
When those that gaue the Thane of Cawdor to me,
Promis'd no lesse to them.
Banq. That trusted home,
Might yet enkindle you vnto the Crowne,
Besides the Thane of Cawdor. But 'tis strange:
And oftentimes, to winne vs to our harme,
The Instruments of Darknesse tell vs Truths,
Winne vs with honest Trifles, to betray's
In deepest consequence.
Cousins, a word, I pray you.
Macb. Two Truths are told,
As happy Prologues to the swelling Act
Of the Imperiall Theame. I thanke you Gentlemen:
This supernaturall solliciting
Cannot be ill; cannot be good.
If ill? why hath it giuen me earnest of successe,
Commencing in a Truth? I am Thane of Cawdor.
If good? why doe I yeeld to that suggestion,
Whose horrid Image doth vnfixe my Heire,
And make my seated Heart knock at my Ribbes,
Against the vse of Nature? Present Feares
Are lesse then horrible Imaginings:
My Thought, whose Murther yet is but fantasticall,
Shakes so my single state of Man,
That Function is smother'd in surmise,
And nothing is, but what is not.
Banq. Looke how our Partner's rapt.
Macb. If Chance will haue me King,
Why Chance may Crowne me,
Without my stirre.
Banq. New Honors come vpon him
Like our strange Garments, cleaue not to their mould,
But with the aid of vse.
Macb. Come what come may,
Time, and the Houre, runs through the roughest Day.
Banq. Worthy Macbeth, wee stay vpon your ley-
sure.
Macb. Giue me your fauour:
My dull Braine was wrought with things forgotten.
Kinde Gentlemen, your paines are registred,
Where euery day I turne the Leafe,
To reade them.
Let vs toward the King: thinke vpon
What hath chanc'd: and at more time,
The Interim hauing weigh'd it, let vs speake
Our free Hearts each to other.
Banq. Very gladly.
Macb. Till then enough:
Come friends.            Exeunt.


Ang. Wee are sent,
To giue thee from our Royall Master thanks,
Onely to harrold thee into his sight,
Not pay thee.
Rosse. And for an earnest of a greater Honor,
He bad me, from him, call thee Thane of Cawdor:
In which addition, haile most worthy Thane,
For it is thine.


           
Rosse. The King hath happily receiu'd, Macbeth,
The newes of thy successe: and when he reades
195Thy personall Venture in the Rebels sight,
His Wonders and his Prayses doe contend,
Which should be thine, or his: silenc'd with that,
In viewing o're the rest o'th' selfe-same day,
He findes thee in the stout Norweyan Rankes,
200Nothing afeard of what thy selfe didst make
Strange Images of death, as thick as Tale
Can post with post, and euery one did beare
Thy prayses in his Kingdomes great defence,
And powr'd them downe before him.
205Ang. Wee are sent,
To giue thee from our Royall Master thanks,
Onely to harrold thee into his sight,
Not pay thee.
Rosse. And for an earnest of a greater Honor,
210He bad me, from him, call thee Thane of Cawdor:
In which addition, haile most worthy Thane,
For it is thine.
Banq. What, can the Deuill speake true?
Macb. The Thane of Cawdor liues:
Why doe you dresse me in borrowed Robes?
Ang. Who was the Thane, liues yet,
But vnder heauie Iudgement beares that Life,
Which he deserues to loose.
Whether he was combin'd with those of Norway,
Or did lyne the Rebell with hidden helpe,
And vantage; or that with both he labour'd
In his Countreyes wracke, I know not:
But Treasons Capitall, confess'd, and prou'd,
Haue ouerthrowne him.
Macb. Glamys, and Thane of Cawdor:
The greatest is behinde. Thankes for your paines.
Doe you not hope your Children shall be Kings,
When those that gaue the Thane of Cawdor to me,
Promis'd no lesse to them.
Banq. That trusted home,

     ……  下書き,今は,こゝまで.以下,メモおよび資料.……

      王土を守る,この大戰(おほいくさ)にての.
      この大いなる,王土の
     
そなたを讚(たゝ)へ,
      我が王の,この大いなる守りの戰(いくさ)にて,
王國の,
降り積む霰と  斯くは霰と  これぞ霰と  降り募る霰もかくやと
降り募る霰に紛う,次〻の報せ.紛うや霰と  まさに霰と まさにも霰と あたかも霰 成すや霰と  積もるや霰と    …相繼(つ)ぐ報せは

Wind rose File:Compass thumbnail.jpg  Macbethwikipedia より

     Thunder. Enter the three Witches.
1. Where hast thou beene, Sister?
2. Killing Swine.
3. Sister, where thou?
1. A Saylors Wife had Chestnuts in her Lappe,
And mouncht, & mouncht, and mouncht:
Giue me, quoth I.
Aroynt thee, Witch, the rumpe-fed Ronyon cryes.
Her Husband's to Aleppo gone, Master o'th' Tiger:
But in a Syue Ile thither sayle,
And like a Rat without a tayle,
Ile doe, Ile doe, and Ile doe.
2. Ile giue thee a Winde.
1. Th'art kinde.
3. And I another.
1. I my selfe haue all the other,
And the very Ports they blow,
All the Quarters that they know,
I'th' Ship-mans Card.
Ile dreyne him drie as Hay:
Sleepe shall neyther Night nor Day
Hang vpon his Pent-house Lid:
He shall liue a man forbid:
Wearie Seu'nights, nine times nine,
Shall he dwindle, peake, and pine:
Though his Barke cannot be lost,
Yet it shall be Tempest-tost.
Looke what I haue.
2. Shew me, shew me.
1. Here I haue a Pilots Thumbe,
Wrackt, as homeward he did come.
             Drum within.
3. A Drumme, a Drumme:
Macbeth doth come.
All. The weyward Sisters, hand in hand,
Posters of the Sea and Land,
Thus doe goe, about, about,
Thrice to thine, and thrice to mine,
And thrice againe, to make vp nine.
Peace, the Charme's wound vp.
             Enter Macbeth and Banquo.
Macb. So foule and faire a day I haue not seene.
Banquo. How farre is't call'd to Soris? What are these,
So wither'd, and so wilde in their attyre,
That looke not like th' Inhabitants o'th' Earth,
And yet are on't? Liue you, or are you aught
That man may question? you seeme to vnderstand me,
By each at once her choppie finger laying
Vpon her skinnie Lips: you should be Women,
And yet your Beards forbid me to interprete
That you are so.
Mac. Speake if you can: what are you?
1. All haile Macbeth, haile to thee Thane of Glamis.
2. All haile Macbeth, haile to thee Thane of Cawdor.
3. All haile Macbeth, that shalt be King hereafter.
Banq. Good Sir, why doe you start, and seeme to feare
Things that doe sound so faire? i'th' name of truth
Are ye fantasticall, or that indeed
Which outwardly ye shew? My Noble Partner
You greet with present Grace, and great prediction
Of Noble hauing, and of Royall hope,
That he seemes wrapt withall: to me you speake not.
If you can looke into the Seedes of Time,
And say, which Graine will grow, and which will not,
Speake then to me, who neyther begge, nor feare
Your fauors, nor your hate.
1. Hayle.
2. Hayle.
3. Hayle.
1. Lesser then Macbeth, and greater.
2. Not so happy, yet much happyer.
3. Thou shalt get Kings, though thou be none:
So all haile Macbeth, and Banquo.
1. Banquo, and Macbeth, all haile.
Macb. Stay you imperfect Speakers, tell me more:
By Sinells death, I know I am Thane of Glamis,
But how, of Cawdor? the Thane of Cawdor liues
A prosperous Gentleman: And to be King,
Stands not within the prospect of beleefe,
No more then to be Cawdor. Say from whence
You owe this strange Intelligence, or why
Vpon this blasted Heath you stop our way
With such Prophetique greeting?
Speake, I charge you.
     Witches vanish.
Banq. The Earth hath bubbles, as the Water ha's,
And these are of them: whither are they vanish'd?
Macb. Into the Ayre: and what seem'd corporall,
Melted, as breath into the Winde.
Would they had stay'd.
Banq. Were such things here, as we doe speake about?
Or haue we eaten on the insane Root,
That takes the Reason Prisoner?
Macb. Your Children shall be Kings.
Banq. You shall be King.
Macb. And Thane of Cawdor too: went it not so?
Banq. Toth' selfe-same tune and words: who's here?
    Enter Rosse and Angus.
Rosse. The King hath happily receiu'd, Macbeth,
The newes of thy successe: and when he reades
Thy personall Venture in the Rebels sight,
His Wonders and his Prayses doe contend,
Which should be thine, or his: silenc'd with that,
In viewing o're the rest o'th' selfe-same day,
He findes thee in the stout Norweyan Rankes,
Nothing afeard of what thy selfe didst make
Strange Images of death, as thick as Tale
Can post with post, and euery one did beare
Thy prayses in his Kingdomes great defence,
And powr'd them downe before him.
Ang. Wee are sent,
To giue thee from our Royall Master thanks,
Onely to harrold thee into his sight,
Not pay thee.
Rosse. And for an earnest of a greater Honor,
He bad me, from him, call thee Thane of Cawdor:



King. No more that Thane of Cawdor shall deceiue
Our Bosome interest: Goe pronounce his present death,
And with his former Title greet Macbeth.
Rosse. Ile see it done.
King. What he hath lost, Noble Macbeth hath wonne.
                       Exeunt.


King. Great happinesse.
Rosse. That now Sweno, the Norwayes King,
Craues composition:
Nor would we deigne him buriall of his men,
Till he disbursed, at Saint Colmes ynch,
Ten thousand Dollars, to our generall vse.


Who comes here?
Mal. The worthy Thane of Rosse.
Lenox. What a haste lookes through his eyes?
So should he looke, that seemes to speake things strange.
Rosse. God saue the King.
King. Whence cam'st thou, worthy Thane?
Rosse. From Fiffe, great King,
Where the Norweyan Banners flowt the Skie,
And fanne our people cold.
Norway himselfe, with terrible numbers,
Assisted by that most disloyall Traytor,
The Thane of Cawdor, began a dismall Conflict,
Till that Bellona's Bridegroome, lapt in proofe,
Confronted him with selfe-comparisons,
Point against Point, rebellious Arme 'gainst Arme,
Curbing his lauish spirit: and to conclude,
The Victorie fell on vs.


If I say sooth, I must report they were
As Cannons ouer-charg'd with double Cracks,
So they doubly redoubled stroakes vpon the Foe:
Except they meant to bathe in reeking Wounds,
Or memorize another Golgotha,
I cannot tell: but I am faint,
My Gashes cry for helpe.
King. So well thy words become thee, as thy wounds,
They smack of Honor both: Goe get him Surgeons.
Enter Rosse and Angus.
Who comes here?
Mal. The worthy Thane of Rosse.

逍遙譯)
ダンカ 手傷と言ひ、申すことゝいひ、 汝そちはあっぱれな 武士さむらひぢゃぞ。 ……(侍者に)それ、彼れの爲に外科醫どもを……
    侍者らが武官を介抱して入る。
( 彼方むかうを見て)來たのは誰れぢゃ?
    貴族ロッスの領主が出る。
マルコ ロッスの領主どのです。

King. What bloody man is that? he can report,
As seemeth by his plight, of the Reuolt
The newest state.
Mal. This is the Serieant,
Who like a good and hardie Souldier fought
'Gainst my Captiuitie: Haile braue friend;
Say to the King, the knowledge of the Broyle,
As thou didst leaue it.
Cap. Doubtfull it stood,
As two spent Swimmers, that doe cling together,
And choake their Art: The mercilesse Macdonwald
(Worthie to be a Rebell, for to that
The multiplying Villanies of Nature
Doe swarme vpon him) from the Westerne Isles
Of Kernes and Gallowgrosses is supply'd,
And Fortune on his damned Quarry smiling,
Shew'd like a Rebells Whore: but all's too weake:
For braue Macbeth (well hee deserues that Name)
Disdayning Fortune, with his brandisht Steele,
Which smoak'd with bloody execution
(Like Valours Minion) caru'd out his passage,
Till hee fac'd the Slaue:
Which neu'r shooke hands, nor bad farwell to him,
Till he vnseam'd him from the Naue toth' Chops,
And fix'd his Head vpon our Battlements.
King. O valiant Cousin, worthy Gentleman.
Cap. As whence the Sunne 'gins his reflection,
Shipwracking Stormes, and direfull Thunders:
So from that Spring, whence comfort seem'd to come,
Discomfort swells: Marke King of Scotland, marke,
No sooner Iustice had, with Valour arm'd,
Compell'd these skipping Kernes to trust their heeles,
But the Norweyan Lord, surueying vantage,
With furbusht Armes, and new supplyes of men,
Began a fresh assault.
King. Dismay'd not this our Captaines, Macbeth and
Banquoh?
Cap. Yes, as Sparrowes, Eagles;
Or the Hare, the Lyon:
If I say sooth, I must report they were
As Cannons ouer-charg'd with double Cracks,
So they doubly redoubled stroakes vpon the Foe:
Except they meant to bathe in reeking Wounds,
Or memorize another Golgotha,
I cannot tell: but I am faint,
My Gashes cry for helpe.
King. So well thy words become thee, as thy wounds,
They smack of Honor both: Goe get him Surgeons.
Enter Rosse and Angus.
Who comes here?
Mal. The worthy Thane of Rosse.
Lenox. What a haste lookes through his eyes?
So should he looke, that seemes to speake things strange.
Rosse. God saue the King.
King. Whence cam'st thou, worthy Thane?
Rosse. From Fiffe, great King,
Where the Norweyan Banners flowt the Skie,
And fanne our people cold.
Norway himselfe, with terrible numbers,
Assisted by that most disloyall Traytor,
The Thane of Cawdor, began a dismall Conflict,
Till that Bellona's Bridegroome, lapt in proofe,
Confronted him with selfe-comparisons,
Point against Point, rebellious Arme 'gainst Arme,
Curbing his lauish spirit: and to conclude,
The Victorie fell on vs.
King. Great happinesse.
Rosse. That now Sweno, the Norwayes King,
Craues composition:
Nor would we deigne him buriall of his men,
Till he disbursed, at Saint Colmes ynch,
Ten thousand Dollars, to our generall vse.

King. No more that Thane of Cawdor shall deceiue
Our Bosome interest: Goe pronounce his present death,
And with his former Title greet Macbeth.
Rosse. Ile see it done.
King. What he hath lost, Noble Macbeth hath wonne.
Exeunt.

5 將校の臺詞 First Folio (F1) の原文は As whence the Sunne 'gins his reflection, Shipwracking Stormes, and direfull Thunders: So from that Spring, whence comfort seem'd to come, Discomfort swells だが,his reflection とは,春分の時期に於ける太陽の變化すなはち日出没の位置の戾り,晝(ひる)と夜の長さの入替り,つまりは『折返し』の事である.隨 つて,ここに言ふ that Spring の Spring とは,まさに『春』のことで,森 鷗外譯なども誤解してゐるが,『泉』のことでは無い.その他,知る限りの譯本で誤譯となつてゐる.まあ,ともかく歐米の校訂家からして his reflection を理解し損ねてゐるのだから,致し方のない事ではある.(たとへば,戰後の飜譯底本として多大な影響力を持つた Dover Wilson の校訂本では,原文である F1 が Spring と大文字で始めてゐるにも拘らず,spring と小文字表記に變へて『泉』の意として仕舞つてゐる.これでは讀者が誤解するのを避けられぬ.校訂本の,常識から判斷して不可解な解説などに關しては,まづは『怪しい』と知るべきであらう.ともかくも,何事によらず『一次資料』に當たる事が最重要と言ふ事である.と,自戒する次第.)


Macb. So foule and faire a day I haue not seene.
荒ぶと見えるや晴れ渡る,
荒ぶと思ふや晴れ渡る
晴れとなる
荒ぶと見せて晴れとなる,

荒ぶやら,晴れる,

荒ぶと思へば晴れ渡る日など,初めて目にした.


太陽が,冬より春に轉ずるや,

    太陽が,春の日の出に轉ずるや,
    船を覆す,時化(しけ)や恐ろしき雷鳴とか.
    同じき春の泉より,安らぎの湧かう折には,
    禍事(まがごと)も頭を擡(もた)ぐ.
    お聽きを,スコットランド王,どうか.
    

    恰も冬の太陽の折返すところより,船を覆す時化(しけ)
    また恐ろしき雷鳴が.つまりは春の訪れの,
    春の訪れ

日の出が春へと轉ずるや,
太陽が,春の日の出に轉ずるや,


逍遙譯)
武官 然るところ、 譬たとへば、 旭日あさひのさし昇る東方から、 怖ろしい 霹靂いかづちや船を 摧くだく大あらしの起りまする如く、 身方みかたが慰安の源泉から、 思ひがけない不安が湧き出でました。

逍遙譯)
さるほどに、官軍が、 正義を 補たすくるに武勇を以てし、逃足輕き輕裝兵をさん〜゛ 打敗うちやぶりましたる其途端に、 隙を 窺うかゞうたるノーヱー王、研ぎ立ての武噐と新手の兵とで、又ぞろ攻めかゝってまいりました。

逍遙譯)
正直に申し上ぐれば、兩將軍は、 宛然まるで二重に 裝彈たまごめをした大砲か何ぞのやうに、 二層倍の勢ひで敵軍に當られました。血の海で 浴ゆあみばなされる積りか、 でなくば第二の髑髏が丘を築かれまするかと存ずる程の凄じいお働き、…… が、息苦しうなりました、傷口が痛んで叶ひません。