2017年4月13日木曜日

Hamlet 總論への memorandum

ハムレット Hamlet 飜譯本文:

『マクベス(下書き)』は,こちら
                              

Hamlet 總論への memorandum

創作上の人物ではあるものゝ,ハムレットといふ靑年王子の目的は何か…この芝居を觀る上で我〻が注目すべきは其處であつて,時〻に現れるハムレットの『惱み』の類(たぐひ)は,目的實現の爲には,克服されるべき『話題』に過ぎない.
父王の亡靈が,何を望んでゐるかを正確に捉へる必要がある.『復讎譚』との括りで觀ては,誤つ事となる.

死後の世界で裁きを受けるとは,Claudius すらも受け容れてゐる考へ方である.

亡靈はハムレットに對し,決してClaudius に同等の苦しみを味(あぢは)はせよと云つたやうな恨み事からの復讎を命じてはゐない,また,望んでゐる樣子も無い.デンマークの僞善と腐敗を一掃せよ,たゞし己れの心を汚す樣な手立ては用(もち)ゐるな,また母親に關しては,自(おの)づと己れの罪を悔いるにまかせよとだけ命じてゐる.つまり正義を實現するに,己れが新たな僞善,腐敗に陥る勿れと言ふ事で,その點はLaertes の『復讎』との,決定的な違ひがある.

Hamlet が母親の墮落に深く心を傷附けられて『死』に救ひを求めようとした事は間違ひ無い.その衝擊が幾度も繰返し甦(よみがへ)り,人としての己れの誇りを踏み躙られて,苦しみ苛まれた事は慥(たし)かである.しかし,果して,人間の『死』そのものが,『救ひ』を齎してくれるものか否かについては,結論を引出す手立てが人間には無い.

人間の『死』といふものにつき,Hamlet が明確な結論を見出し得たか否かに關しては、何とも言ひ難い.作者である沙翁自身,搖るぎ無い結論を得てゐたか否か,問はれゝば,答へに窮したであらうとしか,言ひやうも無い.Hamlet の述べる『演戲・演劇論』にあるやうに,芝居はこの世をあるがまゝ,鏡に映し取るやうに,揭げて見せるだけであり,神ならぬ身が,神になる譯のものであらう筈も無い.皆,人間が有限な存在である事に、我も沙翁も違ひは無いのである.そして,さうした『そのまゝ』の姿を芝居に寫し取つたのだ.さうした中にも,取卷く事情は急迫する.まさに我〻の人生とは,さうしたものである.たゞたゞ正義の實現だけは,不正を押し通す相手を前に,捨て去り難い要請の相を深めて行くのである.

0 件のコメント:

コメントを投稿